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【ちょっと昔の世界一周】 #6 《人恋しさ》

ついに初の国境越え&夜行バス

その為の初チェックアウト。

バックパックを背負い私は歩き始めた。

バスの出発時間は日が暮れてから。
なので荷物は旅行会社で預かってくれることになっていた。

私のバックパックは一般的なバックパッカーと比べれば小さめの30Lほど。
なので周囲の旅人と比べても軽いはずなのだが、普段背負い慣れていないせいもあるが、これからの旅の不安からか見た目よりも重く感じる。

期待と不安が入り混じり歩を進め、もはや見慣れたカオサンロードに着いた。

先日私に声をかけてくれて女性が同じように店の前でおしゃべりしている。

「サワディーカー!」

以前とは逆にこちらから声をかけた。

あっ、この前の日本人だ。

そんな感じで手を振ってくれた彼女を通り越し店の中に入る。

「いらっしゃい」

私に気づいた店長が声をかけてくれた。

旅初心者の雰囲気の私のことを覚えていたらしく

「この前より少し旅慣れ感出てきたね〜」

と一言添えてくれた。

お世辞だと思ったがなんだか嬉しかった。
というよりも印象に残るぐらい旅慣れしていなかったのかぁ…
そんなことを思いながら荷物を下ろす。

「その辺りに置いといていいよ。貴重品は信じてくれるんなら預かるよ!」

信じますとも!
そう思いながら貴重品が入ったカバンを預ける。

「20時ごろ出発だから、19時には戻ってきてね〜」

軽い感じで見送ってくれる店長。
あとは時間まで自由に過ごす。

とはいえ前日までのように観光スポットに行くのは疲れる。
なので近場をブラブラと歩いて過ごすことにした。

前日の夜に雨が降ったが相変わらずの暑さ…
人の熱気も加わりアジア独特の空気感の中、時間を潰す。

時々日陰を求め、カフェ(レストラン?)に入り冷たい飲み物で喉を潤したり、初日に利用してから行きつけになったネット屋に入りラオスの情報や家族へメールを送る。

お腹が空けば美味しそうな屋台を探してみる。
幸いにもこれまで色々食べたがお腹の調子は問題ない。

気がつけばあっという間に17時を過ぎていた。

『この前みたいに誰かいたら話を聞けるかな?』

そう思い旅行会社に戻ることにした。

たかが4、5日しか経っていないが人恋しいのだろうか…

いや、悩むまでもなく人恋しいのだろう。

それはそうである。

なるようになる

その考えに変わりはないが、こんなカタチの旅は初めて

様々な刺激を受けて楽しいに違いないが、そこに寂しさも隠れていた。

自分自身も見つけきれていなかったの心の中にある本当の感情に気づいた気がした。

そんなことを考えていると店の前に戻ってきていた。

中に入ると以前のように店長のテーブルの周りに数人の旅人の姿が見えた。

「こんにちは」

声をかけると皆こちらを向く。

「あっ、戻ってきた。同じバスに乗る人いるよ〜」

と、店長がその中の2人を紹介してくれた。

「どうも〜。俺も一緒なんですよ!」

真っ黒に焼けた肌。
綺麗なのだがよれたTシャツ。
ハーフパンツにサンダル。

私の中で考える代表的なバックパッカー!

『この人と一緒だったら心強そうだな』

師匠...そう言いたくなる雰囲気の男性が挨拶してきてくれた。

その横にもう1人、長髪の男性が立っていた。

「よろしくで〜す」

師匠ほどではないが、こちらもかなり旅慣れしている感じがする。
歳は同じぐらいだが、こちらは先輩といった雰囲気。

「こちらこそお願いします!」

私も挨拶を返しみんなの話の輪に入る。

よく考えれば、こういった時に会話に入っていくということは苦手だったはず。

旅を始めわずかの時間で成長したのかもしれない。
そんなことを思いながらみんなと時間を過ごす。

2人に私が初めての旅だということを伝えると、色々と旅に役立つ情報を教えてくれた。

すると、師匠が

「そういえば腹ごしらえはしたの?確か飯休憩ないよ」

と言ってくれた。

そういえばチケットを買った時に店長もそう言っていた。

「まだなんでちょっと行ってきます」

そう答えると先輩も、自分も行ってくるわ。と続く。

店を出て時計を見るとあと1時間ほど。
しっかりと食べることもできるが、せっかくならみんなと話もしていたい。

いつものパッタイの屋台に行き持ってきて食べよう。
そう思い、歩き始める。

屋台に着くといつも通り元気いっぱいの兄弟がいた。

パックいっぱいにパッタイを詰めてもらいお金を渡す。

「See you Tomorrow !!」

いつもは「Thank you !!」だが、初めてそう言われた。

このタイミングとは不思議なものである。

これからラオスに行く。そう伝えると

「Nice Trip !!」

と笑顔で言ってくれる。

最後までなんていい子たちなんだ…

なんだか温かい気持ちになり店へ戻る。

再びみんなの輪に入りパッタイを食べ始める。

「それ、めちゃくちゃ盛りよくない!?」

1人がそう言ってくる。

金額と場所、それと毎日行ってたら多くしてくれたことを伝えると、俺も明日から行くわ〜。とみんなが言い出す。

親切にしてくれた彼らに少しは恩返しできたかな?
そんな風に思いながら食べていると先輩も戻ってきた。

少し雑談をしているとそろそろ出発時間。

師匠、先輩に続き私もバックパックを背負い歩き出す。

「荷物小さくねぇ〜!!」

2人だけでなくみんなにもそう言われたが私には充分な重さ。

気をつけてね〜!!

大勢に見送られ私(私たち)は出発した。

と、ここで早速問題が…

どこに行けばいいのだろう…

日時、時間は知っている。
しかし重要な乗り場が分からない。

そんな私をよそに進んでいく2人。
私はさも当然のように2人に付いて行った。

カオサンロードの路地をどんどん進んでいく。

路地...

日中でもなんとなく足を踏み入れるのをためらっていた。

それこそ夜になって暗闇も多い路地に入ることはしていない。

しかし2人は進んでいく。

置いていかれたら困る。

私も2人と一定の距離を取り歩を進める。

すると、見慣れた大通りに出た。

するとそこに人だかりができている場所がある。

「まだバス来てないか〜」

師匠がそう呟く。

どうやらそこでバスに乗るらしい。

私たちが着いてすぐに一台のバスがやってきた。

「やった!あのタイプなら寒くないわ〜」

バスを見て先輩が口を開いた。

寒い?

私の疑問を察してくれたのか、師匠が

「タイのバスっていいやつだとクーラー効きすぎて寒いんだよ。下手すると風邪引くからね!」

確かに。
私も先日の街歩きの時に一度BTS(タイの電車)に乗った。

その時にとても寒かったことを思い出した。

話を聞くとタイだけでなくアジアでは地元の人は暑さにはそれなりに慣れているものの、その反動でクーラーがあるとガンガンにかけるらしい。

移動手段であるバスもその影響でクーラー付きだとかなり冷やす。

ランク的にいいものだとその可能性がより高いらしい。

今回来たバスはそこまでは高ランクではない。

乗り心地もそれなりでクーラー無しという、旅行者にとっては最適なものらしい。

さすが、旅慣れしてる人たちはわかってるもんだな。

そんな話をしているとバスから乗務員らしき男が降りてきてチケットをチェックしだした。

次々にチケットを切ってもらって乗り込んでいく。

私たちも荷物を預けチケットを切ってもらい、いざ乗ろう!
そう思ったが、2人は動かない。

乗らないんですか?そう言うと2人揃って

「荷物のドアが閉まったら乗るわ」

と返してきた。

またしても不思議な顔をしていたのだろう。

今度は先輩が

「荷物預けてすぐ乗ると、そこから盗られることあるからね〜。俺はないけど結構やられてる人いるからね」

えっ...

さらに師匠が

「昔、ツアーでランクル(ランドクルーザー)の屋根に載せてる時に、反対側にそのまま落として出発されたことあるからね。席は決まってるんだし、確認しないとね〜」

この人たち、なかなかのことをサラッと言う。

私も2人を見習って荷物のトランクが閉まるまで様子を見てバスに乗り込んだ。

席は2人掛けでしっかりとしたシート。
私の席は通路側。
その通路を挟んで先輩。
その後ろに師匠が座る。

私の隣は同年代ぐらいの女性。

隣にいかにも旅行者です。といった雰囲気の外国人が乗ってきて多少相手にしないような感じを見せる。

先ほどの乗務員が人数を確認し始めドライバーに合図をする。

バスのドアが閉まる音がした。

ついに出発。

明日の朝には国境に着く。

ついに始まる。

期待と不安が入り混じる中バスが動き始めた。

正直にいえば不安の方が多い。
しかし、偶然とはいえ同じ場所に行く仲間がいる。

人との関わりの大切さを知り、私の旅が進んでいく。


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