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秋が深ま...らない

《雪虫》
福島出身の私だが、地元にいた時はあまり見た記憶がない。
それが北海道に来て十年。雪虫が飛べばそろそろ雪かな〜と思うようになったのだから、だいぶ馴染んできたんだろう。
毎年見ていた雪虫だが今年はまだ見ていない。自分がただ見ないだけかと思ったが周囲でも話しは聞かないし、いまだに外でよく遊ぶ娘たちもまだ見ていないと言う。

それぐらい今年は熱...暑かった。
北海道に引越してきた時は
夏ってこんなに涼しいのか!
と感じていたが、慣れとか関係なく年々暑くなってきている。

自己紹介でも書いたが、私は福祉施設で働いている。とはいえメインの仕事は園芸部門の作業支援。ほぼビニールハウスで花の管理を行なっている。
そんなわけで天気には敏感にならざるをえないのだが、ここ数年の管理は大変。
夏場は暑すぎて仕事ができないほど...
今年も例年をさらに上回り暑かった...

今の時期に育てている花はシクラメン。冬を代表する花だが今年の成長はかなり遅い。ようやく朝晩の冷え込みが本格的になってきて花も咲き始めたがまだまだ。道内の花関係の人達に聞いても、今年は暑さトラブルが多いらしい。

思い返せば数年前の十月下旬にはビニールハウス前に大量の落ち葉があって、落ち葉掃きが一仕事になっていた。それがいまだにないのだから今年の秋はどこにいったのだろう。
周囲の木々も色づき始めてはいるが、たまに青々とした木も見つけられる。それなのに寒い時は寒いでそれなりになってきている最近の天気。
このまま冬が一気にくるのだろうか。
今住んでいる所は豪雪で有名な場所なので毎年の雪かきは戦い。それはそれでしょうがないのだがせめてその前に秋を楽しみたいと思う最近の私。

昔は夏、冬が好きだった。
スポーツをするとかではないのだが夏の日のいつまででも遊んでいられる雰囲気だったり、冬は冬でコタツでぬくぬくしながら温かい物を食べたり外に出て冷たい空気を感じたり。
今もそれは好きなのだが年のせいか春、秋の良さも感じられるようになってきた。
雪が溶け暖かくなっていく春の心地良さ、暑さが過ぎ赤く染まっていく景色を見ながらゆったりとできる秋。
四季のある日本に生まれてよかった
と感じることが増えてきたのだが、今年は秋を感じることが少ない。

ここ数年は冒頭に書いた雪虫の情報を聞くと気持ち的に冬になっていくのだが、このままいくと秋を感じる間もなく冬を感じるのではないかと思う。

年齢を重ねるごとに季節の魅力を感じることが増えてきた。その中でも四季の中でも秋という季節には若い時には気づかなかった魅力がたくさんある。

昔を思い出すと実家には庭があった。
休日に祖父がなんのこともなく庭を眺めている姿が記憶にある。
当時はただ庭を見るという行為が何になるんだろうと疑問だった。
ならどこかへ出かけるなり別の何かをすればいいんじゃないかと思っていた。
それが今は、ただ庭を眺めるのもいいものだと思えるようになってきた。
写真という趣味を持ったから見るという行為の楽しさを知ったこともあるだろう。それだけではなく、以前の一人旅でただ景色を眺め時間が過ぎていくのを楽しめるようなったこともある。
イースター島で見渡す限りの水平線と空を眺め雲の動きを感じる、あるいはボリビアの山の中、電気は小さな発電機しかない村で夕陽が沈んでいくのを村人たちとただ眺める。
そんな経験をしたことで時が流れていくのを感じそれを楽しめるようになったのかもしれない。

そんな今の自分だからこそ昔以上に秋を楽しめるようになっている。
食べ物が美味しくなるのを楽しむのは昔から変わりない。読書も小さい頃から本が好きなので、食欲・読書の秋の楽しさは知っていた。
それに加え景色を楽しむことができるようになってきたおかげで夏から冬に向かっていく季節の変化に魅力を感じる。
時が流れまたやってくる。
秋という季節はそのことをとても感じられる。実に魅力的な季節だ。

去年の紅葉も遅かったが今年はどうなるのか...

そんな秋が短くなりそうな今年はなんともいえない気持ちになる。

四季の中でも秋だけに《秋が深まる》という言葉がある。この言葉を調べてみると様々な考え方が出てくる。色々と読んでいくと紅葉との関係で秋にだけ深まるという言葉が使われるということがわかってきた。
夏が過ぎ木々の紅葉が始まり、次第に濃くなっていく。色彩の深まりがある季節だから秋にだけ深まるという言葉が使われる。
しっくりきた。

四十代を目前にしてようやく秋の魅力を感じられるようになってきた。
未来はどうなるかわからないが、秋を感じられるのは年に一回。限りあることだからこそ秋に限らず四季を感じて生きていったら楽しいかな。と思うようになった。

〝冬〟白の世界
〝春〟始まりの季節
〝夏〟夜空に咲く花
〝秋〟移り変わり

こんなことを考えるようになったのは歳をとったんだろう。
歳をとったにしても楽しみを知れたのだからよしとして、まずは今年の秋を感じられるようにしていこう。
四季を感じられる日本で生まれ育ってよかった。

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