【ショートショート】虫の知らせ
忘れられない恋だったとしても
現状、貧乏暇無し日々の忙しさ
それから新しい出会いの分
在りし日の淡い思い出なんてものは
いつぞや記憶の片隅に追い立てられる。
あの子が好きだったガクアジサイの香りがしても
今じゃ季節の美しさにただただ心が躍るだけ。
藍は藍より出でて愛なんてご大層なものよりも
蒼くさく呑気に咲くのみ。ぱっぱらぱぁだ。
古傷の痛みなんてとっくのとおに寛解していた。
明けもや朝露が霧がかり
いきいきと伸びる朝顔のつたと
くたびれたフェンスの少し淋しい緑のコントラ