ERP会計:5-1 ERPで売上アップ 効果的な販促

■目次に戻る

 ERPで売上アップ? SFAの間違いじゃないか? そんな声が帰って来そうだ。が、あえて声を大にして主張したい。ERP導入は、必ずや売上増の大きなカギになる。

 今回から、
1) 効果的な販促
2) 受注業務の効率化(フロント・サイド)
3) 受注業務の効率化(バックオフィス)
4) 変化への対応
の4回に分けて、売上増を実現する仕組みを解説したい。

 初回は、「効果的な販促」について見てみよう。

 発注先を選定するにあたり、重要なのがQCD(注1)のバランスだ。一般に、この三要素は相互にトレードオフの関係にあるとされる(注2)。

そうした「常識」に反し、QCDを「同時に」改善できたらどうだろう? 得意先の目には「魅力的なサプライヤー」と映り、ひいてはシェアの増大、売上げアップにつながるはずだ。

 とは言え、この常識外の難題を、どうすれば解決できるだろう?

 ここで効いてくるのが、「業務と会計のデータ統合」の回にも見たERPの特徴、すなわち業務(この場合では受注業務)関連情報を一元的・透過的に保持できることだ。

 一部の例外(たとえば自動車の主要資材等)を除き、年間の生産計画や需要予測を買い手と売り手が情報共有し、価格や納期を最適化できているケースは少ないだろう。これは、B2B、B2Cを問わずだ。発注は子会社・支店ごとに行われ、グループ通算で、サプライヤーごとの仕入総額が把握できないレベルにとどまるケースも多いのではないか。

 買い手側が発注総量を把握のうえ、売り手にボリュームディスカウントを求めるというのが「普通の」プロセスだが、たとえばこれを逆にやってみたら、どうだろう? 

 サプライヤー側で、得意先からの受注総量に応じたディスカウントを提案するのだ。ただし、これは単なる値引きではない。たとえば、全国展開している得意先の、ある地域のみシェアが低いケースであれば、そこで一定の発注をコミットしてもらうかわりに単価を割り引く。

 買い手は発注単価の引き下げを、売り手は売上増、まさにWin & Winだ。

 季節変動の激しい発注を平準化してもらう、先行発注してもらえば単価を下げる等の提案をおこなう。急激な取引減を早期に把握し固定客の離反を防ぐ。売上増に効果のあった販促キャンペーンを特定する。業種業態によって工夫のやりようは様々だが、有効な打ち手を導くためのデータは、既にそこ(ERPの中)にあるのだ。それを使わない手はない。

 データ分析の手法については、「1-7 「思考スピードの経営」を支えるAI(前編)」を参照願いたい。

注1)Q: Quality(品質)、C: Cost(価格)、D: Delivery(納期)の三要素。注2)特急便の納期にするには品質で目をつぶるか、割高な価格を受け入れねばならない等。

■目次に戻る

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?