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翻訳記事:デザインシステムチームの投資収益率(ROI)

さまざまな企業やチームのデザインシステムプロジェクトを支援し、アドバイザーとして関わる中で、必ず話題になるテーマの一つが「どうやってデザインシステムやチームそのものの費用対効果を社内で説得するか?」というのがあります。

結論から言うと、デザインシステムは企業活動の一環であり、成果物としてのアウトプットでない事を理解する必要があります(もちろんFigmaファイルを作ることでもない!😁)。つまり、デザインシステムを進めるためには、企業活動として必要なコストの予算化(しかもかなりの額!)は避けて通れません。勢いだけでできるのは、デジタルネイティブな企業のアプリ開発ぐらいです、と伝えながら、一緒に悩みながら時間かけて組織改革を一歩づつ進むしかないのが現実です。

とはいえ、そうした問題意識があって前に進めない組織の方が、むしろ健全だと思う今日このごろ。

デジタルネイティブ企業、つまり本業がデジタルサービスを開発しているような企業の場合、良くも悪くもプロダクト開発そのものが結果としてデザインシステムの構築活動に等しい、あるいは近しいことが多く、本業開発のための人員採用がそのままデザインシステムのための準要員的な補充となっていることも多いです。このラッキーな現状も理解せず、レガシーな組織や非デジタル企業(製造業や本業がリアルビジネスな企業)が下手に勢いでデザインシステムに手を出し、途中で頓挫するケースもよく見ます。このような状況を避けるための一つの解決策として、エンジニア組織の内製化だと思ってると違う意味で痛い思いするけど、皆さん、現実見えてる?

さて現実という意味で、Dan Mallの今週のDSUニュースレター「Uniform」は、デザインシステムのROIでした。どストレートな現実的な記事だったので、訳しときました。(著者許可済み)

補足1: 訳すにあたって元記事の金額単位の表記(US$)を単純に円換算して注記しました。せっかく円表記するなら(?)、日本市場に合わせた金額、つまり記事内の年収10万ドル(≒約1,600万円)であれば、2/3とかざっくり半額の800万円ぐらいに書き換える方がリアリティあるのかもしれないですが、無駄な幻想抱いている人にも現実を直視(謎)するという意味でそのままにしています :)
補足2: 海外の場合、デザインシステム担当者は専任が多いです。

以下、記事の翻訳。


デザインシステムチームの投資収益率(ROI)

by Design System University
July 16, 2024

デザインシステムチームの投資収益率(ROI)に関する会話の大部分は、いくつかの共通のことに集中しています:

  • チームがデザインシステムを実装することでどれだけ時間が節約されるか

  • デザインシステムの利用者がが新たに作り出せるものの価値

しかし、こうしたことを評価する前に、チームがクリアしなければならない最初のハードルがあります。それはチームのコストです。デザインシステムチームの共通の行動は、ゼロから始めて価値を創造しなければならないということです。そして、実際にはさらに厳しい現実があります:それは赤字状態から始める必要があるという事実です。

デザインシステムチームメンバーの平均年収を10万ドル(訳注: 約1,570万円)と仮定すると(通常はそれ以上ですが、計算を簡単にするために下げています)、2人のチームは年間20万ドル(訳注: 約3,150万円)のコストがかかります。2人のチームは、1年間で20万ドルの価値を生み出さなければ元が取れません。

6人のチームは年間60万ドル(訳注: 約9,436万円)のコストがかかります。6人のチームは、元を取るには1年間で60万ドルの価値を生み出す必要があります。

そうでなければ、デザインシステムチームが働かない方が会社にとっては節約になります。もしくは、少なくともデザインシステムよりも価値を生み出す別の作業に従事するでしょう。

これが厳しい現実です。

このような計算が役員たちがデザインシステムチームの資金を削減したり、再配置したりする原因になります。

しかし、デザインシステムのニヒリズムになる前に、少なくとも損益分岐点を確保するためにできることがいくつかあります:

自分の数字を知る

組織にとって価値のあることに取り組んでいることを確認するために、常に手元に置いておくべき具体的な数字がいくつかあります。

もし、5人のデザインシステムチームで働いている場合、平均年収10万ドルは、チームの月間コストが41,666.67ドルです(10万ドル × 5 ÷ 12)(訳注: 月約584万円)。

毎月1つのコンポーネントを出荷できると仮定すると、そのコンポーネントは月に少なくとも41,666.67ドルを節約しなければなりません。すべてのコンポーネントがこの要件を満たすわけではありません。多くのデザインシステムチームは基盤作業に時間を費やすのが好きですが、そのような作業はうまく行うのに時間がかかります。スケーラブルで堅固なボタンコンポーネントを作成するのに1か月かかるかもしれませんが、チームの作業時間を2時間しか節約できません。41,666.67ドルを費やして96.15ドル(訳注: 約13,500円)を節約する(年収10万ドル ÷ 年間業務時間2,080時間 × 2時間)のは意味がありません。

この問題を解決するためにスケールに頼るチームが多いです。ロジックは次のようなものです:「ボタン1つで1人の時間を節約するだけでは96.15ドルしか節約できないかもしれませんが、スケールで大きく節約できます。」これを試してみましょう。ボタンコンポーネントで収支をトントンにするためには、434人以上の人がボタンコンポーネントを使用する必要があります(デザインシステムチームの月間コスト41,666.67ドル ÷ 人あたり96.15ドルの節約)。デザイナー30人、エンジニア30人の組織では価値がありません。デザイナー3,000人、エンジニア3,000人の組織では、より実現可能になります。約束するスケールで実際に働いていることを確認してください。

常に約束するスケールで作業することを確認することに関連することですが、機能要件チームが必要としている重要なコンポーネントに取り組むことを決定するデザインシステムチームを多く見かけます。彼らは内部エージェンシーや機能要件チームのスタッフオーグメンテーション(人材派遣)のように行動しますが、計算は決して合いません。4万ドル(訳注:約560万円)の作業を費やし、1万ドル(訳注: 約157万円)しか節約しません。計算を行わないので気づかないのです。なぜなら、1)機能要件チームが非常に感謝しているため、デザインシステムチームは素晴らしい気分になる 2)計算を行っていないから、です。

重要なのは:他の人々が作成に長い時間を要するものに注意を集中し、あなたのチームが短時間で作成できるものを見つけましょう。一見簡単なようですが、ほとんどのデザインシステムチームはこれを行っていません。スケーラブルで堅固なデザインシステムの作業は時間がかかり遅いのが常ですが、いつもそうある必要はありません。他のチームも時間がかかるものでそれよりも遅くてよい作業を見つけましょう。つまり、他のユーザーよりも短い時間で作成できるものに取り組むということです。他の人が4週間かかるものを、2週間で作成できるものは何か?他の人が8週間かかるものを、4週間で作成できるものは何か?この条件を満たすコンポーネントはおそらく数えるほどしかありませんが、それがデザインシステムチームが時間を費やすべきことなのです。

— デザインシステム大学創設者、Dan Mall

P.S. - このリストの他の59.4%の人々と同じように、デザインシステムの経験がありながら、まだ成長の余地があると感じているなら、90日間でデザインシステムを学ぶ(Design System in 90 Days)の次回のコホート(プログラム)に参加することを検討してみてください。業界全体から集まった仲間と毎週90分間学ぶ対面クラスです。次のコホートは9月10日に始まり、年末までに持続可能なデザインシステムの実践ができるようになります。登録開始は8月1日なので、今から上司やマネージャーに話始めてください(そして、便利な「上司を納得させるガイド(Convince Your Boss)」もご利用ください)。


翻訳以上。

Dan Mallといえば、去年の11月に待望の渾身書籍『Design That Scales』を発売しています。英語版なのであまり日本では話題になっていなかったですが、日本語版が来月発売されます(早っ!)しかも監訳は我らが@yhassyです!

「That Scale」を「育て方」と訳すあたりは流石です。ぜひ買いましょう!

以上。


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