長久

2024/4/28『余命一年、向日葵みたいな君と恋をした』発売。第8回スターツ出版文庫…

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2024/4/28『余命一年、向日葵みたいな君と恋をした』発売。第8回スターツ出版文庫大賞【優秀賞】&【U18審査賞】W受賞、ありがとうございます。お仕事のご依頼はメール→ nagahisa.novel@gmail.comまで、どうか気軽にお願いします。

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青春オオカミはバケの皮をはむ

あらすじ ある日から、俺の見る世界には――カメレオンが満ちることになった。 旧校舎、謎の大鏡を見た後から、まるで世間に溶け込もうとする俺を揶揄するように。 この狂った世界から、人間に戻りたいと俺は奔走する――。 1章 青春オオカミはバケの皮をはむ|長久 (note.com) 2章 青春オオカミはバケの皮をはむ|長久 (note.com) 最終章 青春オオカミはバケの皮をはむ|長久 (note.com) #創作大賞2024 #恋愛小説部門

    • 最終章 青春オオカミはバケの皮をはむ

       重い気持ちで登校した金曜日。教室で銀狐の姿をつい探してしまうが――。 「――花宮? その姿……」 「……おはよう。またね」  こちらから話しかけても、にべもなく去っていく。  女子用ブレザーに身を包む、ゆるふわ長髪でナイスボディをした――カメレオンが。  寄ってきたカメレオンの群れに、花宮の声を発した個体も溶け込んでいく。 「顔まで人間に戻った銀狐だったのに……。カメレオンになるなんて」  花宮にとって、自分がカメレオンの姿になるのを見るのは初めてだ。  それも――。 「人

      • 2章 青春オオカミはバケの皮をはむ

        2章 「なるほど。つまり、義兄さんや花宮貴子先輩は、世界が変質したと言いたいのかな?」  半狂乱状態になった花宮と、教室で話しを続けるわけにはいかなかった。  人……と言うかカメレオンどもが集まってきそうだし。知名度がない俺と違い、花宮は有名人だ。学園のアイドルを泣かしている体がでかいぼっち男。  そんな光景が目撃され拡散に至れば、自ずと無名だった俺の名は広まるだろう。『最低最悪の男』という悪名がね。  そんな心臓に悪い展開にはなりたくない。だから俺は花宮を連れてオカルト研

        • 1章 青春オオカミはバケの皮をはむ

          1章 「全人類がカメレオンに見える」  こんな不思議体験をしたことがある人はいるだろうか。  ちなみに俺はある。 「義兄さん、どうかしたのかい?」 「……珠姫なのか?」  自宅の洗面所にある鏡に映るのは自分だけじゃない。  声をかけてきたのはブレザーを身に纏い、2本の足で立つカメレオンだ。  身長140センチメートル後半と、人間としては小柄だがカメレオンとしては大型だな。尻尾まで入れた体長ならもっとでかそうだ。 「なんだい、寝ぼけてるのかな? ぼくがいい目覚め薬を作ってあげ

        青春オオカミはバケの皮をはむ

          太陽の下、栄冠は輝かない

          あらすじ  二刀流で将来有望な高校球児、大滝武尊には――長らくライバルだった幼馴染みにして彼女の、和泉桜がいる。  女性という理由で、高校野球では出場資格がない桜は、マネージャーへ転向した。  2人の思い描いた夢、託した夢。  互いの半身とも言える間柄の2人だったが――。  2人の夢の旅路、そして恋愛関係は――大きな転換点と挫折を迎えてしまう。   序文 太陽の下、栄冠は輝かない|長久 (note.com) 1章 太陽の下、栄冠は輝かない|長久 (note.com) 2章

          太陽の下、栄冠は輝かない

          最終章 太陽の下、栄冠は輝かない

          最終章 「――よっす。やってるか?」 「……大和」  大晦日まであと僅かの十二月二十六日。  日暮れ頃になって、大和が我が家へ様子を見に来てくれた。両肩には、何やら大きな段ボール箱を担いでいる。 「その汗、ちゃんと筋トレはサボってないみたいだな」 「……当たり前だろ。経過観察も良好で、素振りの許可も出たし」  午前中に受診をしたのだが、その際に素振りの許可が出た。ただし、投げるのは絶対にダメだと厳命された。  そうとは言え、バットを振れるようになったのは嬉しい。久しぶりに気

          最終章 太陽の下、栄冠は輝かない

          3章 太陽の下、栄冠は輝かない

          三章  母さんの葬儀が終わってしばらく経っても、まだ我が家の周りのセミは忙しなく鳴いている。セミって案外、寿命が長いんだな。 「……少年野球の頃から、お前の一番のファンはおばさんだったよな」  大和は麦茶を飲みながら、そう言葉を零した。  机にコップを置くと、カランッと氷がコップに当たる音が響く。大和の視線の先には、仏間で親父の遺影の隣に増えたおふくろがいる。炊きたての線香の奥で、おふくろは良い笑顔を浮かべていた。 「ああ、一番のファンで、一番のアンチだった。俺がフォアボー

          3章 太陽の下、栄冠は輝かない

          2章 太陽の下、栄冠は輝かない

          二章  迎えた夏の甲子園、埼玉予選。  準決勝から二日後、県営大宮公園球場で決勝戦という日程だ。  俺たち市立秩父は――今年も、決勝にまで駒を進めた。  そしていよいよ明日が、甲子園を賭けた運命の最終戦だ。  自分の高校で軽く調整をした後、俺たちは明日の臨時バスへの集合時間を伝えられ、解散となった。  何しろ秩父から大宮公園球場まで、電車で行けば二時間ちょっとかかる。そこに駅までの移動や、徒歩で駅から球場まで行く時間を加味すると、三時間以上は移動だけで取られる。まず、駅まで

          2章 太陽の下、栄冠は輝かない

          1章 太陽の下、栄冠は輝かない

          一章 「ノック始めるぞ! 守備位置につけ!」 「「「しゃす!」」」  監督の指示に、俺たち秩父市立秩父高校――通称、市立秩父の野球部員は、一斉にグラウンドへと走る。  野球部特有の、なんと言っているのか分からない声で気合いを入れながら。  ノック――守備練習をする為に。  それぞれがダッシュで守備位置へとついた。  全員、準備オッケーだな。――よし、始めるか!  ピッチャーマウンドに立つ俺は、ホームベース横でバットを握る監督に向かい投球動作をする。 「サード!」  それに合

          1章 太陽の下、栄冠は輝かない

          序文 太陽の下、栄冠は輝かない

          序文  夏の全国甲子園大会予選、埼玉県大会の決勝へと向かう前のバス。  OB会の差し入れという名の、強制配布の弁当を取ろうと段ボール箱の中へ手を伸ばす。 「……意地でも差し入れを断る勇気が俺にあれば、こんな後悔はしなかったのかな」  誰に話しかけるでもない。  俺は自嘲気味にそう呟いた。  去年の夏を、それ以降の激動の日々を思い出す。  自分の半身、彼女も去った。  大きな家で独りぼっちになったのは、自分の弁当を差し置いて……。  いや、言い訳はやめよう。  失った大切なも

          序文 太陽の下、栄冠は輝かない

          最終章

          最終章 「彩楓、気を付けてね」 「うん、お母さん。学校が終わったらすぐに帰るから、待っててね」 「毎日言われなくても、まだ死なないわよ。……彩楓に言いたいことを残したまま、逝かないわ」 「じゃあ……。その言いたいこと、一生聞きたくないかな」  最後の言葉は、お母さんに聞こえなかったかな?  分かってるのに……。もう、お母さんは……生きることが苦しいと思ってるなんて、分かってるのにね。  まだまだ一緒にいたくて、私を一人残して逝かないでほしくて……。思わず、我が儘が口から漏れ

          2章

          二章  河村さん……。いや、彩楓さんとの偽装婚約者生活が始まったわけだけど……。  彼女が上尾市に引っ越して、まだ一ヶ月ぐらい。そんな状況でいきなり婚約者を名乗る男を連れて行ってもダメだ。「俺が婚約者です。彩楓さんを幸せにします」とお母さんに言っても、信じてもらえるはずもない。  そういうわけで、お母さんが納得するアリバイ作りが必要だとなったから――。 「――凛空君! はい、お弁当!」 「……うん、教室じゃないとダメなのかな?」 「ダメじゃないかな? 万が一、お母さんが学校

          1章

          1章  人間同士の平等なんて本当の意味では、ありえない。  人が複数いるからには、必ず優劣が生まれる。 「風間? 一人で掃除してんのか?」 「先生。……まぁ、そうなりました」 「まさか、いじめか?」 「違います。……ただ、惨めです」  箒を手に、慌てて笑みをつくる。  先生は少し怪しむような表情をしながらも「何かあったら、遠慮なく相談しろよ」と廊下に戻った。  まさか、自分が三学期末テストの点数勝負で負けたから、罰ゲームで掃除をさせられましたなんて、被害者のような告げ口はで

          序章

          序文  人生なんて不平等。  持つ者と持たざる者がいるのが当然。  持たざる者は一生、上手くいかず自己肯定感の低さに耐えて生きるしかない。  そう語る君の暗い瞳が、優しい嘘をたむけてくれるために一変した。  熱く燃えるような輝きを、私は絶対に忘れない。  もう大切な人たちには伝わらないだろうけれど……。  最期に、この言葉を残して去りたい。  君たちは絶対、これから幸せになれるから――。 #創作大賞2024 #恋愛小説部門

          60点の俺と100点な君がたむける嘘

          あらすじ 「俺なんて、何をしても可もなく不可もなしの評価にしかなれない……」  高校三年生になる風間凛空は、何をどんなに頑張ろうと『万能の凡人』という評価に思い悩んでいた。  こんな自分に、楽しく明るい未来なんて待っているのか、と。  そんな凛空はある日――。 「――やっと、伝えられ……」    彼の目から見て、100点満点の女性と出会う。  それが、彼らにとっては永遠に大切にする想いに――。 序章|長久 (note.com) 1章|長久 (note.com) 2章|長

          60点の俺と100点な君がたむける嘘