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「哲学書」と「哲学的実践」の違い

設計図と建造物の比喩

「哲学書」と「その実践」を「設計図」と「建造物」と比べて考えたい。

設計図に於いて記述される構想は、現実に於いて再現される。そして構想に於ける建造物は、それ自体が設計の基準であり、寸分の誤差や瑕疵が無い。設計図上でのことであるから当然である。

しかし、設計図をもとにして建設される建造物には設計図と異なり多少の誤差が生じうる。この実際的な建設物に対して為されるべき批判とは、「設計図を忠実に再現していない」という批判であり、設計図そのものを批判することではないだろう。

対して、設計図に対する批判とは、建造物の構造的欠陥を指摘することではなく、その設計理論が現実的に技術や予算で作られるかどうか、また安全性は十分であるか、法に則っているか、ということである。そのような点に於いて設計図への批判は行われるものであり、設計図を批判する際に、設計図を再現した建造物を批判することは本質的ではない。

そのために、まず、この設計図への批判と建造物への批判を峻別することが批判的思考の初歩であるだろう。

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