ウイルス対策について怒りの電話がかかってきた図書館で思ったこと

 こんにちは。
 私は図書館で働いています。いつもご利用ありがとうございます。  
 先日のことです。テレビのニュースを見ていたら休校中の過ごし方として図書館の利用を紹介しているのが目に入りました。
「ほう、図書館ですか」と見ていると、取材を受けたその図書館では図書を除菌ボックスに入れることでウイルス対策をしているとのこと。その映像を見た瞬間、これはまずいことになりそうだなという予感がしました。そしてその予感は早々と翌日に的中しました。
 電話がね、かかってきたんですね。受けたのは私ではなくて他の職員。かけてきた相手は図書館を利用している子どものお母さんだと名乗ったそうです。お母さんは図書館のウイルス対策についてお尋ねになり、そしてお怒りになって、電話をお切りになったそうです。お母さんが言うには「消毒液のプッシュするポンプがあるのは当然。除菌ボックスがないのは非常識」だそうです。ごめんね、お母さん。消毒液はあるけど除菌ボックスはないんだ。

 除菌ボックスの相場はピンキリで多くの本を一度に除菌できる大型はだいたい30万。小さくて2、3冊のもの(お客さんにセルフで利用してもらったりするところもあるみたい)2万〜5万です。そんなお金がねえ、ないんですねえ。お母さんの論理でいくと分館を多く抱えているウチの市は除菌ボックス×館数ということになるわけで、それはもうけっこうな予算になってしまうわけで、そうなったら図書館はブッ潰れちゃう。難しい話です。もちろんそんな予算のことなんて当然お母さんは知らないですもんね、電話口で「図書館を利用するのは自己責任ってことですか!自己防衛しろってことなんですか!」とブチ切れていたそうです。
「いつもそうなんだけどな」
 電話を受けた職員はそう思ったそうです。

 誰が悪いという話ではないです。ウイルスも怖いしそれが引き起こす不安も怖いなという話です。
 当たり前ですけれど、そのニュースでは全国の図書館がそうしてますなんて言ってはないわけですよ。除菌ボックスのない図書館を紹介してる他のニュース番組もありました。不安は人を疑り深くさせるだけではなく、その逆、信じ込みやすくもしますね。あの恐ろしい地震の時のことを思い出しました。その日のミーティングで「普段、あまり図書館を利用しない人なんじゃないかな」とみんなで話をしました。
 そんな人がたまたまテレビを見る→確か息子は図書館で勉強してると言っていたな→心配になってきたわ→図書館に聞いてみようという流れ。
 本当のところは分かりません。子どもがいること自体嘘で、ただテレビを見たから電話してきたのかもしれない。冗談じゃなく、そういう人は少なからず存在して、図書館にはそういう人がよく電話してきますから。どちらにせよ電話を受けた職員は傷つき、疲弊しました。それが全てです。我々もウイルスのこと恐ろしいと思っているし、感染源にはなってはならないと思っているし、そして誰かに強い言葉をぶつけられたら傷つくのです。ウイルスとおんなじくらい蔓延してる不安が少しずつなくなって、余裕がでてくるといいですけどね。でも自分の不安は自分しかなんとかできないですからね。いくら人にぶつけたってね、真の安心はないですからね。私は自分自身で気を付けるようにします。
 電話をかけてきたお母さんだって、そのお母さんが心配している子どもだって、電話を受けた同僚だって、私だって、いつウイルスに感染するか分かかりません。もう、感染しているかもしれませんしね(急にホラーっぽい終わり方)

今日はここまでです。
読んでくださって、ありがとうございました
のび

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