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『真夜中のたずねびと』恒川光太郎(著)

次々と語られる、闇に遭遇した者たちの怪異譚。ゲストハウスでほんの一時関わっただけの男から送られてくる、罪の告白。その内容は驚くべきもので……(「さまよえる絵描きが、森へ」)。弟が殺人事件を起こし、一家は離散。隠れ住む姉をつけ狙う悪意は、一体、誰のものなのか(「やがて夕暮れが夜に」)。全五篇。

今作はホラー成分多め。しかも読後嫌な気分になるやつ。クズ率が高い。個人だけでなく社会も腐ってる。まるで現実のようで気が滅入るが、主人公たちの超然とした姿に心が雪がれる。

特に好きなのは以下2つ。

ずっと昔、あなたと二人で

阪神大震災で孤児となった女の子が空き巣で生きていくお話。ある日霊能者と出会い、天使として指令をこなしてゆく。ある日、大きな任務として子供の死体を回収しに行くのだが…。

胡散臭い霊能力者の家とはいえ、安住の地ができてよかったなぁと油断してたので終盤の超展開にやられた。これは映像化希望だよ。絶対映えるよ。恒川作品でトップクラスの美しさ!

やがて夕暮れが夜に

弟がカツアゲに失敗し人を殺してしまうお話。そこから家族への、マスコミや周囲の人々からのリンチ地獄が始まる。

まるで見たように書く恒川光太郎に恐怖だし、たぶん絶対そうなる諦観しかないこの日本に恐怖。
弟の糞っぷりにも腹が立つが、無関係の周りが無関係の家族に攻撃してくるのが、本当に辛い。人間の本質を見せつけないでくれ。
それにキレず真摯に謝る主人公が眩しく救われつつも拍子抜けしてしまう。やはり自分は小市民。加害者側のメンタルなんだろうな、と突きつけられた一作。辛い。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #ホラー

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