『スタープレイヤー』恒川光太郎(著)
異世界に飛ばされるが10個願いが叶う、というなろう系ファンタジーを、ホラーファンタジー作家の恒川光太郎が描く。大人げない怪作。
世界観は、レベルやスキル、魔法やダンジョンなどがあるゲーム世界ではなく、割と普通に文明が発達してないだけの人間が暮らす世界。この世界にいきなり主人公が放り込まれ、混乱しながら生活してゆく様子が描かれる。なので宮部みゆきのブレイブ・ストーリー(これも極めて大人げない)に似てるが結構違う。
望みが10個叶うのだが、まず衣食住をなんとかしたりで数個消費し、自分の容姿を変えたり、過去を精算したりで、願いをがんがん使っていく様子がもったいなくて悶絶してしまい、いかに自分が小市民か感じさせられた。
あと、このお話の最大の特徴ははやり人間の醜さだろう。せっかくの異世界なのに、人間の醜悪さがこの世界となんら変わっていない。数々のスタープレーヤーが10個の望みでこの世界をより捻じ曲げており、悪意を目立たせている。その醜さと、主人公のお花畑のような平和さのギャップが楽しい。
しかしなろう的世界にしてしまったせいで、恒川光太郎の他作に見られるその発想はなかったなという、斜め上の設定がみられないのは至極残念。続編に期待かな。
お話に全然関係ないが、最後に国の名前が”麗和”となるが、令和発表の際は関係者一同惜しい! と叫んだんだろうな(笑)
最後に、野暮を承知でいうが、透明化はありなの?
それならラピュタとかドラえもんもありなの?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?