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『ピエタとトランジ 完全版』藤野可織(著)

天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、彼女の才能に惚れ込み助手に名乗り出たピエタ。トランジは事件を誘発させる体質で、次から次に周囲で人が死んでいく。
あるとき、トランジに秘められた恐るべき事実が明らかになり、人類は滅亡に向かう――!?
芥川賞作家が送るスリル×サスペンス×友情の、超弩級ガールズ・エンターテイメント!

うわぁ何だこれ凄い! 『SFが読みたい2021』で知ったので、てっきりSFだと思っていたら、ミステリーが始まり、いつのまにか、テルマ & ルイーズみたいなロードムービーになってた。凄い。

コナン君みたいに周りに死を振りまく存在のパロディなのだが、それが○○し(この展開には痺れた)、世界が滅亡してゆく。終末SFといえなくもない。純文学の雰囲気があるなぁと思ってたら芥川賞作家であった。納得。

目次は「○○殺人事件」ばかりなのだが、事件そのものは添え物程度で、謎解きもない。ピエタとトランジの二人や、その周りが何を感じ、どうしてゆくのか、というお話が、ピエタのギャルっぽい一人称で続く。そのあっけらかんとした語りがドライでスピーディー。お話も子供時代から老人になるまで、どんどん時間が進んでゆくが、軸は全くずれないし、語りも変化しないので、世界が変わってゆく様に集中できる。悪い方悪い方へと世界が進んでゆくのだが、二人はそれを楽しんでいるのか、飄々と生きてるのが面白い。たぶんトランジには苦悩があるのだが、ピエタのおかげで絶望せずにいられるのだろう。二人の、親友というより、魂の片割れ同士、二人で一人、といったあり方が素敵で憧れる。森ちゃん(惨劇に巻き込まれる同級生)の壮絶な人生もぐっときた。

そしてラストの短編が完璧。ニヤニヤが止まらないよ。この人は全部読むリスト入り。

ちなみに、イラストは松本次郎。知らない人がこの絵をみても、可愛いねとしか思えないが、『フリージア』とか『女子攻兵』とか、あの人の漫画を読んだことある人間がこの絵をみると、それだけで他作の狂気が上乗せされる。最高の人選。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF

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