誰がために穴を掘る

汗だくで穴を掘りながら考える。

完全犯罪って意外に沢山あるのでは?
1年あたりの殺人事件は数百件だが、行方不明者は8万人だ。
何万人も殺されて、人知れず処分されていると考えるのが理性的だ。

プロは死体を溶かす薬品とか、ミンチにできる施設とか、遠洋に捨てられる船とか、火葬場を自由に使えるコネとかもってるんだろうなぁ、と羨ましくなる。素人は穴を掘るしかない。たとえヤブ蚊だらけの真夏でも。

数万人のうち、プロと素人の比率はどれくらいだろうか? と益体もないことを考えながら穴を掘り進めていると、スコップがグニャリとしたものに刺さる。嫌な予感しかしないが、土を払うと、肉と骨が見えた。

最悪だ。私と同じこと考えて、同じことしてやがる。
私の荷物をここに捨てると、同居人に捜査のメスが入った時、道連れで発見される可能性があり危険だ。しかし、それはそれで撹乱できて良いかも、とも思える。なにより、もう穴を掘りたくない。理性は別の穴を掘れ、と叫ぶが、肉体がもう無理と叫ぶ。よって、荷物を一緒に埋めて帰った。

3年間、生きた心地がしなかったが、無事時効が成立。ストロングゼロと大量のスイーツで祝う。おめでとう自分!
3年の習慣でニュースを見ていると、あの山で次々と死体が発見されたという。その数なんと72体。一番新しい死体は死後3週間だという。ついてねーやつだな!と笑いながら、シュークリームにかじりつく。




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