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『SF飯』銅大(著)

時は人類を過保護すぎるほど守ろうとした機械知性“太母”が“涅槃”へと旅立ったあとの時代。中央星域の大商家の若旦那マルスは、人柄はよいもののだまされやすく、勘当されて辺境の宇宙港へと流れてきた。行き倒れた若旦那を救ったのは、祖父の食堂“このみ屋”を再開させようとがんばる少女コノミ。ふたりは食材の不足、単調なメニュー、サイボーグや異星人という奇天烈な客にめげず、創意工夫でお腹と心を満たしていく!

タイトルに惹かれ手に取る。21エモン的ファンタジーSFで結構面白かった。しかしタイトルにある飯部分はガチめのSFで、藻をいかにおいしく加工するか、というお話で全然食指が動かず笑えた。

飯以上に世界観が好きだ。機械知性が悟りを得て涅槃に入ってしまったため人類は取り残され、宇宙に浮かぶ遺産で細々生きてるあたりが最高。星をテラフォーミングし宇宙ステーションに住んでいるのに電子書籍すらないとか、宇宙ステーションは事故に備えて上下水道が無いので銭湯生活とか、ディテールはハードSFなのに、生活が妙にノスタルジック。主人公とヒロインの店も大衆食堂だし。

文章や言い回しも結構好きで「あと知恵が意味を持たないのが、四次元時空連続体に縛られた知生体の限界である」には笑った。また、旅行鞄がちょくちょく動いている描写があるのに誰も突っ込まず、地の文でもずっとスルーしていたり、読者を引き付ける小技がうまい。さらに普通に異星人が商人として地球人と接していたりと、ゆるSFとガチSFがちぐはぐに混ざっている不思議な世界も嫌いじゃない。

お話は短編4話からなっているが、各話メリハリと盛り上がりに欠けるが、それが変にリアルな所も良い、と感じてしまえるほど、この作品が好きになってしまった。

また、若旦那がなにやらかしたのかとか、ギフトは何なのかなど、伏線が残ってるので2巻も楽しみ。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF #銅大

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