『横浜駅SF』『横浜駅SF 全国版』柞刈湯葉(著)
最高に笑えるシニカルSF。設定がすでに面白いのに、その阿呆な舞台で生きてる人々をシリアスに描くものだからギャップでまた笑ってしまう。
お話は、横浜駅が本州の99%を覆った終末世界で、駅外に住む主人国が18きっぷを手に入れ横浜駅探索に行くお話。しかしSuicaがないので逮捕されたり、JR北海道のエージェントや、反体制組織とと出会ったりしながら、42番出口を目指してゆく。というもの。わりとご都合展開が目立つが、まったく気にならない楽しさ。この42番出口からしてヒッチハイクガイドだし(笑)
設定がいちいち笑えるので笑った奴メモ。
クレイ・グーをおこす横浜駅。この工事いつ終わんねん、という皮肉をここまで展開できる才能に惚れ惚れする。
駅が広がりすぎて、逆に鉄道が失われてる。移動は徒歩、エレベーター、エスカレーターのみ。
鉄道が失われてるくせに、銃の型番が新幹線(N700とか)
通貨単位がミリエン。デフレが進みまくって逆デノミが起こってる。Suicaのデポジット500円はそのままなので、作中では50万ミリエンとなっており、駅ナカの住民を苦しめている。
横浜駅が目立つが、シリアス設定も素晴らしい。
実は世界は終末戦争後で、人類は激減しており、日本だけ横浜駅のお陰でだいぶ生き残ってる。なので、無から資源を生み出し続けてる横浜駅はかなり貴重な存在。しかし暴走して土地を侵略しまくってる困った存在でもある。駅外の人間としては、制御して利用すべしという勢力と、制御なんてできねーよ断固滅ぼすべしという勢力に分かれてしまう。
しかし駅ナカの人類は、駅が色々生み出すので、働く必要がなく、文明がめちゃくちゃ後退しており、縄張り争いする猿程度の存在になってるのが哀愁を誘う。この設定は『未来職安』に繋がったんだろうね。
そんな世界で、あのラストはナウシカ(漫画版)ばりにもにょっとする。
ちなみに、全国版は外伝集。サブキャラたちの過去話が読める。ファン向けの一冊。冒頭1行目、駅歴で笑わされた。
ユキエさんを掘り下げて欲しかったなぁ。
コミカライズもされており、かなり小説に忠実。しかし表情がある分、シリアスさが勝ってしまい笑えなくなってる。メディア化の難しさを感じる。
そしてなぜか全話無料で公開されてるので皆読もうぜ。
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