『白昼夢の森の少女』恒川光太郎(著)
いままでの単行本に入りそこねた短編10編を集めた一冊(文庫は描き下ろしが追加され11編)。珍しく著者後書がついていて嬉しい。なぜ他のにはついてないのだろうか。読者は喜ぶのに。
以下好きなやつをピックアップ。いつも通りハズレ無しで、全体的にホラー寄りなので夏向け。
焼け野原コンティニュー
記憶喪失物。そして周りが廃墟と死体ばかり。そして死んでも蘇るという謎しか無いお話。
不思議はあれど希望のないお話。最後の手紙が虚しい。
銀の船
時空を旅する船のお話。
乗ると不老不死になれるが娯楽がしょぼい。船から降りると人間でなくなってしまう。不老不死も閉鎖環境もどっちも地獄だから読んでるだけで閉塞感でしんどい。オチもさもありなん。
平成最後のおとしあな
探偵ごっこにのめり込んだ人のお話。
後半までは笑って読めるのでギャグ枠かと思いきや、ラストの悪意のなんたることか。
夕闇地蔵
白黒での視界と、エネルギーが見える第2の視界をもつ人のお話。
電気もない時代の山村で、捨て子だった主人公がある日殺人を目撃してしまうのだが、その顔見知りの犯人を暖かく見守るのが面白い。そして第2の視界だけで見える生き物っぽい何かが怖くて良い。これは長編で読みたかったな。
しかしそもそも、なんで単行本と文庫、2種類だすのかな? 単行本のほうが装丁が豪華で値段が高く保存用だというのなら、文庫だけに描き下ろしを入れるの、趣旨と反してない? 単行本買うやつは文庫も買うだろ、って商売なの?
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