『ミン・スーが犯した幾千もの罪』トム・リン(著)鈴木美朋(訳)
西部劇でファンタジーでロードムービー。意外な組み合わせが不思議な読み心地。苦味と希望の混じったラストも素晴らしい。佳作。
お話はミン・スーが復讐してゆくだけなのだが、その道中、見世物一座の用心棒として一緒に旅する事で一服の癒やしとなっている。
ハードな旅、銃撃戦、一座との邂逅が平行して進み、ミンの出生や復讐の理由が明らかになってゆく。
面白いのが、この一座、手品やフリークスではなく、本当の奇跡を身に宿す者たちであること。観客同様、読んでて「え?」ってなる。普通の小説だと、この各人の能力が復讐劇に役立ったりするのだが、本作では驚くほど絡まない(笑) 預言者だけ襲撃を教えてくれるが。
この設定なくても良い気がするが、あるからこそ、この不思議な読書体験になってると思うと、小説とはなんぞやを考えさせられる。
ただ、預言者は便利に使いすぎかな(笑)
一座と絆を深めた終盤、もう復讐なんて良いじゃないという空気になるが、義務だから、と敵のアジトに突貫するのが切なくて良かった。
西部劇の小説を人生で初めて読んだのだが、法律のほの字も出てこない所、大好き。生活感なしの上澄みだけの描写だけど、眺めてるぶんにはおもしろい。
あと面白かったのが銃。リボルバーって、薬莢発明後の銃だと思っていたが、それより前からあったのね。シリンダーに弾と火薬直接つめてる描写が面白い(打ち尽くしたらシリンダーごと交換する)。
雷管つける箇所をニップルって呼ぶの笑ってしまった。
しかし、ライフルとか散弾銃は普通に薬莢だったので、設定がよくわからない。主人口が古い銃を愛用してる?
しかしそんな銃で、60ヤードの射撃をあてる主人口が格好良い。
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