記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ハイクオリティー宇宙アンソロ『短編宇宙』

最近、夜空を見上げていますか? 個性豊かな人気作家陣が「宇宙」をテーマに描くのは、無限の想像力がきらめく七つの物語。石垣島を旅する父娘に、コロナ禍でステイホーム中の天文学者。銀河を舞台に戦う殺し屋に、恋する惑星!? じんわり泣ける家族小説から、前衛的SF作品まで、未知との遭遇を約束する傑作アンソロジー。鬱屈した日々に息苦しさを覚えたら、この一冊とともに、いざ宇宙へ!

宇宙をテーマにしたアンソロ。短編7編で、見知った作家が多いので手に取る。翻訳SFより日本語SFの方が表現力豊かで楽しいので、ただそれだけで嬉しくなってしまう。どれもが素晴らしく、ほぼ一気読みしてしまった。

『南の十字に会いに行く』加納朋子(著)

父娘で沖縄に旅するお話。

加納朋子は久々に読んだが、いつのまに読者を手のひらで転がすようなテクニックを! と吃驚。泣かせにきてると身構えたところ、見事に転がされた。

『惑星マスコ』寺地はるな(著)

仕事をやめて姉の嫁ぎ先でぼんやり過ごすし、同じように社会に適応できない人々と出会う。

初読み作家。文章は楽しくて結構好み。ただ、内容が村田沙耶香を薄めたような感じなので、もうちょい考察というか、一歩踏み込んだなにかがほしかった。

『空へ昇る』深緑野分 (著)

架空科学史もの。突如土塊が浮き、天に登っていく現象について考察される。

土が浮いて空に昇り、惑星にリングができる様子は想像するだけで楽しい。しかし物理学的には矛盾しまくりなので、この世界の科学者は大変そうだな(笑)

『惑い星』酉島伝法(著)

太陽や惑星の一生のお話。

久々に酉島伝法の造語を堪能してニヤニヤしてしまった。星が意識を持つガイア論的お話で、異形などは出てこないが、太陽や惑星が成長し、変わっていく様子が楽しい。地表の生物を一顧だにしない所が笑える。「地球を守ろう」とか言ってる人間に読ませたい一遍。

『アンテュルディエン?』雪舟えま(著)

男子高校生の片思いの様子が描かれる。

BLだが、じつに爽やかで可愛らしい。延々いかに好きかが語られるのに胃もたれしない不思議な活力に満ちてた。日ごろ読まない方面なので新鮮な気持ち。

『キリング・ベクトル』宮澤伊織 (著)

万物プリンタでつくられた殺し屋が奮闘するお話。

めちゃくちゃ笑った。裏世界ピクニックより断然好き。人間の設計がいかに欠陥だらけか熱弁をふるう所(二人以上の集団を形成しただけでバグる、という所で爆笑)、言語パックをケチって無料版をインストールしたがために、会話の途中で広告を口走る所が最高。

『小さな家と生きものの木』川端裕人(著)

コロナ禍でリモートワークしてる天文学者一家のお話。

内容よりも、ついにコロナ禍が小説の舞台になる事に吃驚。ついこないだ始まり、まだ続いている事象が、紙媒体の小説になってるスピード感に衝撃をうけてしまった。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?