記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『アメリカン・ブッダ』柴田勝家(著)

もしも荒廃した近未来アメリカに、 仏陀を信仰するインディアンが現れたら――未曾有の災害と暴動により大混乱に陥り、国民の多くが現実世界を見放したアメリカ大陸で、仏教を信じ続けたインディアンの青年が救済を語る書下ろし表題作のほか、VR世界で一生を過ごす少数民族を描く星雲賞受賞作「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」、『ヒト夜の永い夢』前日譚にして南方熊楠の英国留学物語の「一八九七年:龍動幕の内」など、民俗学とSFを鮮やかに交えた6篇を収録する、柴田勝家初の短篇集。解説:池澤春菜

その発想はなかったが続く短編集。筆力もあり、なかなか楽しい。しかし個人的には、もっとストーリーに説得力とケレン味が欲しい。アイデアが特出してるだけに、物足りなさを感じちゃう。

南雲省スー族におけるVR技術の使用例

生まれた直後からVRゴーグルをつけ、そのまま一生を過ごす少数民族のお話。

いきなり剛速球が来たな! と心ときめいたが、特にヤマもオチもなく。民俗学レポートチックなお話。出落ちぎみ。

鏡石異譚

素粒子加速装置のある町で、未来の自分と出会い、悪い出来事を回避してゆくお話。

展開が予想外で好み。真実を知った主人公をもっと掘り下げてほしかったなぁ。この本で一番好き。

邪義の壁

由緒正しい実家の壁から塗り込められた白骨死体やら仏壇がでてくるお話。

民俗学者が手を引く所で、そんなやつは学者ではない、という怒りを感じてしまいストレス。もっとホラーに寄せてほしかったかな。

一八九七年:龍動幕の内

南方熊楠と孫文がロンドンで謎解きするお話。

謎解きの爽快感がないのがややもったいない。でも南方熊楠の破戒僧のようなキャラが楽しくてもっと読みたい気分にさせる。粘菌学者だったとはいえ、あんなに不潔だったとは思えないが楽しいので良し。『ヒト夜の永い夢』につづくようなので読んでみよう。

検疫官

おうむの夢と操り人形 (年刊日本SF傑作選)』で既読。

君、この短編の主人公だよ、と追い打ちをかけたい。

アメリカン・ブッダ

アメリカが天災やらパンデミックやらをうけ、デジタル世界に退避するお話。仏教徒のインディアンが帰還を促すが…。

アメリカ人たちがこぞってMアメリカというデジタル空間に移住(本体は冷凍保存)し、もともと住んでいたインディアンに大地を返却するという発想が最高。アメリカ人に読ませたいわぁ(笑)

ただやはりお話に説得力がなく、Mアメリカの文化がしょぼすぎる。何万年も過ぎてるのだから、現実と洒落にならないギャップがあるだろ、と考えてしまう。しかしラスト一文でフフッとなる。これがやりたかったのね、と納得のオチ。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?