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21世紀の地獄『テスカトリポカ』佐藤究(著)

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。

直木賞作品だから娯楽大作なんだろうな、と思って読んだらあまりのバイオンレンスに衝撃をうける。縦軸も地獄だし、横軸も地獄。個々のエピソードも地獄。それを歯車とし、より巨大な地獄が組み立てられる。

ただの暴力もエグいのだが、アステカの宗教が加わることにより、オカルト成分が加わり別種の恐怖が追加されエグい。

アステカ文明は他の本や漫画で見知ってるだけで、心臓を捧げるのは知っていたが、詳細な儀式は知らなかったので、この本の生々しい描写が結構ショック。その他、生皮を剥ぐ祭りは吐き気がした。

さらに犯罪者たちのIQが高いのにも驚かされる。頭が良いのにネジが吹っ飛んでるので、犯罪のレベルが高い。これらに軍隊のような暴力が備わることで完全にアンタッチャブルな存在になってゆく。

もしかして、この本は最後までこのまま地獄を見せられただけで終わるのか? と暗澹たる気持ちになったが、終盤に綻んでゆき一安心。

しかしラスト、ちょっと良い話風に終わったが、彼は別に善ではなく、別の悪に他ならない。純粋な力に神性を感じてしまうが、彼、全然罪の意識無いしね。心臓密売ビジネスも枝葉末節が変わっただけで残ってるだろうし、いまいちスカッとしきれず。

とはいえ、よく調べたなという圧倒的情報量、キャラ立ちまくりの濃い人々、素晴らしい構成力、すべてがお見事。心臓の弱い人にはお勧めできないが、一読の価値あり。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #ホラー

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