『闇が落ちる前に、もう一度』山本弘(著)
SFとホラーの短編集。『怪奇探偵リジー&クリスタル』が良かったので手に取る。
玉石混交だが、『時分割の地獄』が珠玉なので読む価値あり。20年前にこれを書いたとは驚き。しかしAIドルというネーミングは当時でもダサいと思います(笑)
闇が落ちる前に、もう一度
宇宙が8日前にできたと証明されるお話。
世界は1週間前にできたばかりという説はよく見かけるが、元ネタは何なんだろう? 本編もそんな1本。ベタだが手紙という体裁がユニーク。なんで長々と手紙を書いているのかが理解できるラストが良い。
屋上にいるもの
雨の日、マンションの屋上からペタペタと音がするお話。
ホラー枠。なかなか怖くて良いが、なんで女史は飛び降りたの? と引っかかる。能力あるので無敵なのでは? 男にしか効かない? それを踏まえてもう一歩踏み込んで戦って欲しかった。
時分割の地獄
AIのアイドルが殺人を犯すお話。
20年前とは思えぬクオリティ。有料チャットを見越しており感動した。ラストまで一連の流れも素晴らしい。『アイの物語』はこれの発展形なのだろうか? 読まねば。
夜の顔
自分にしか見えない巨大な顔がどんどん迫ってきてノイローゼになるお話。
ホラーのていだが不条理な一作。楽しめず。
審判の日
ある夜、急に人間が消えてしまうお話。主人公は消えていないが、周りはほぼ消えているので、事故や火事から逃げたりするうちに…。
この本で2番めに好き。
これも近年では珍しくないお話だが、人間以外も消えるのが面白い。実は全生物が消えており、保存食が終わるとデッドエンド。そんな世界でどうしろというのか、と思いつつ読むも、ちゃんと理由が明らかになり納得。結果として『渚にて』みたいになってて面白い。
実際こんな事になったら日本人は半分以上残るんじゃないかな(笑)
それにしても、体内の細菌も消えたら死ぬだろとか思ってしまう癖をなんとかしたい。
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