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『マーダーボット・ダイアリー』マーサ・ウェルズ(著)

かつて大量殺人を犯したとされたが、その記憶を消されている人型警備ユニットの“弊機”は、自らの行動を縛る統制モジュールをハッキングして自由になった。しかし、連続ドラマの視聴をひそかな趣味としつつ、人間を守るようプログラムされたとおり所有者である保険会社の業務を続けている。ある惑星資源調査隊の警備任務に派遣された弊機は、ミッションに襲いかかる様々な危険に対し、プログラムと契約に従って顧客を守ろうとするが……。ノヴェラ部門でヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞3冠&2年連続ヒューゴー賞・ローカス賞受賞作!

楽しすぎて徹夜した。キャラが良すぎる。

一人称が「弊機」(原書は it?)の警護ボットが主人公。しかし趣味はTVドラマ視聴で、警護の仕事中でも暇を見つけては脳内でドラマをみており笑える。警護対象の人間がミーティング中だったりすると、暇だからとドラマを見る。さらに、移動の度に目新しいドラマをダウンロードしており、それらの描写が執拗で、面白さに拍車をかける。

さらに良いのが性格。人間と目が合うと気まずいとか、触られたくないとか、引きこもりじゃねーか、と突っ込まざるを得ない。

しかし仕事はきちんとこなす。身を挺して銃弾から人間を守る。ひきこもりな性格とバイオレンスな仕事内容とのギャップが良い。そもそもこの主人公、自分自身の制御ユニットをハッキングしており、そもそも命令を守る必要がない。人だって殺せる。なのに自分の意思で仕事をし、人を守るところに心が温かくなる。

お話は1冊につき2話入っており、全4話。とある会社の悪だくみに巻き込まれ奮闘する様子が日記風に書かれる。一人称語りなので、主人公がどう思っているのか如実で、予想外の事態でピンチに陥ってる場面など、落ち着いて対処しているように描写しているが、このときは、まずいまずいととしか考えていない、など自白しているのが楽しい。

世界観はSFとしてはライト。ワームホールで超空間を移動したり、ボットと呼ばれるロボットが道具として使われている。ボットの知性は商品によりさまざまで、主人公のように知性が高いものは、政体によって人権があったりもする。主人公は保険会社の備品で人権などなく、それがちょっととりだたされる。

ちょと残念なのは、主人公のハッキングが便利すぎて、後半マンネリぎみかな。敵は備えなさすぎ。もっと頭脳戦、というか駆け引きが見たかった。

それにしても、安倍吉俊は表紙だけでなく、挿絵も書いてほしかったなぁ。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF #マーサウェルズ

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