『ゴリラ裁判の日』須藤古都離(著)
ゴリラ一人称の法廷劇小説。いきなり敗訴から始まるのでびっくりする。その後は生い立ちが語られ、敗訴後の時間軸に戻るのだが、新展開には度肝を抜かれた。正直、ラストよりびっくり。
裁判劇がメインだが、ゴリラでありながら中身はほぼ人間というローズが、アイデンティティを確立してゆく物語でもあり、そちらも読み応え抜群。手話で話すゴリラといえばココを思い出すが、ローズはそのはるか上をゆき、メンタルがほぼ人間なので違和感がなく読みやすい。反面、人間が理解できなさそうなゴリラ独自の思考や趣味趣向はあまりなく、理解できない未知を楽しむという要素がないのが非常にもったいない。
まぁSFというより、裁判劇メインなので仕方がないが。
ラストは、最初から人権の問題だと思ってたので驚きはない。ローズの演説がアメリカの有名な公民権運動のスピーチらしいが(調べたら、ジェシー・ジャクソンの ”I am somebody”)、日本での知名度がないので、感動が薄いかな。アメリカでそこ出版すべき本だろう。本場ポリコレ民の感想が聞きたい。
しかしそもそも、そもそもゴリラは裁判を起こせるのかというのが一番気になるなぁ。
ちなみに、動物の権利モノだと、『ダーウィン事変』(アフタヌーン連載中)のほうが踏み込んでるのでオススメ。
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