記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

怖いというより不気味『夜市』恒川光太郎(著)

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた――。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング! 魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。

竜が最後に帰る場所』で恒川光太郎にはまったのでデビュー作から読んでゆく。

デビュー作はホラーらしいので、『竜が最後に帰る場所』とは全然違う作風なのかな? と思っていたら、全く変わってなくて吃驚。最初から完成されてた。最初から世界観が並ではない。よくわからんが凄いものが読みたい人にオススメ。

夜市

人外が催す普通ではない夜市のお話。

ファンタジーが始まった、と油断したそばから恐ろしい展開が襲ってくる。何でも買える夜市という舞台で、人間の弱い心が翻弄されてゆく。

ほのぼのした語り口、のほほんとした主人公、それが急に人身売買の話になるテンポの急落がリアルで怖いのよ。そしてその後はそういう恐怖が連打でくるし。なのにラストは爽やかだし。お話も恐ろしいけど、それを思いつく恒川光太郎が一番怖いよ、と大半の読者が思ってしまうのではないだろうか。

こんな話書く作者の方が怖い系だと、村田沙耶香とか酉島伝法を思いつくが、恒川光太郎はそれを超えてきたね。

ちなみに、『竜が最後に帰る場所』の一遍『夜行の冬』にちょっと似てる。ホラー度ではこっちが上かも。

風の古道

人外が利用する裏道のお話。

漫画でよく見かける、通常空間を大幅にショートカットしてくれる謎の道のお話だが、当然、そんな普通の話ではない。

子供二人が道に紛れ込み出られなくなってしまう上、大人同士の争いに巻き込まれ、一人が銃で撃たれてしまう。そこからが本編。特殊な空間特有のルールが生み出すドラマがえげつない。

先がまったく予想できない所が不気味だし面白いのだが、その後も予想外の展開、アイデア、ドラマが続き、完全にノックダウンされた。展開が読めない以上に、伏線の回収が見事なのも素晴らしい。傑作。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #ホラー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?