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感想

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#サスペンス

『悪なき殺人』コラン・ニエル(著)田中裕子(訳)

フランス小説らしいなかなかのページタナー。新展開につぐ新展開でなかなか読ませる。しかし、表紙からシリアスな話を想像してただけに、阿呆な展開とオチに唖然ですよ。これは大真面目なのか、恋愛体質フランス人を揶揄するギャグなのか判別できないよ。 お話は、冬のフランス山奥で、一人の女性が行方不明になり、捜索隊が何週間も探すが一向に見つからず…というもの。5人それぞれ個別のドラマから、1つの真実が浮き上がるという構成。 1人目はソーシャルワーカー。ほぼ不倫のお話で読むのをやめようかと

『時計仕掛けの歪んだ罠』アルネ・ダール(著)田口俊樹(訳)

スウェーデン売上1位の傑作犯罪サスペンス。 15歳の少女3人の連続失踪事件を追うベリエル。目撃の通報を受けて急行するも、3度とも現場はもぬけの殻で、彼は苛立ちを募らせていた。事を荒立てたくない上司の警告をよそに、殺人事件だと確信し捜査に執念を見せるベリエルはやがて、それぞれの現場写真に映る不審な女に目をつける。緊迫の攻防、息を呑む逆転劇、衝撃の真相……。ここまで目を見張る取り調べシーンがかつてあっただろうか。ページをめくる手が止まらない、スウェーデンNo.1ベストセラーの傑作

『マイ・シスター、シリアルキラー』オインカン・ブレイスウェイト(著)粟飯原文子(訳)

真面目な看護師コレデはうんざりしていた。美貌の妹アヨオラが、今日もまたその彼氏を殺してしまったのだ。これで三人目。コレデは死体を処理するが、次第に警察の捜査が姉妹に迫り……。ナイジェリアの新星が描くブラックユーモアと切なさに満ちたサスペンス コメディタッチだが、コメディではない。人間がいかにルッキズムに支配されてるかに切り込む良作。 誰もが振り返る美しい妹の人生はイージーモード、真逆の醜い姉はハードモード。さらに妹の世話まで焼かねばならない。妹に振り回され続ける姉の人生が

『念入りに殺された男』エルザ・マルポ(著)加藤かおり(訳)

フランスの田舎町でゲストハウスを営んでいるアレックス。あるとき、宿泊客としてやってきたゴンクール賞作家のシャルル・ベリエに襲われ、彼を殺してしまう。彼女は夫にも事情を隠してパリへ行き、殺人の隠ぺい工作を始める……スピード感あふれるサスペンス 作家を殺してしまったが、自首すると愛する家族と離れ離れになるうえ、子供はきっと虐められる。そんなの耐えられない。というわけで、作家は放浪を続けてますよ、というていで、作家のスマホでツイッターに投稿したり、家族知人にメッセージをおくり、生

『パーキングエリア』テイラー・アダムス(著)東野さやか(訳)

真冬の夜、女子大生のダービーは、母の容体悪化の知らせを受け、猛吹雪のなか車を飛ばす。そして、休憩のために立ち寄ったパーキングエリアで偶然、一台の車の中に少女が監禁されているのを目撃してしまう。誘拐犯は居合わせた男女4人のうち誰か? 夜明けまでの絶望的な死闘を描くノンストップ・サスペンス。 噂通りのページターナー。ピンチの連続で本を置くタイミングがなく一気読みしてしまった。 吹雪の中、携帯の電波も通じない山中のパーキングエリアが舞台。主人公を含め5人が吹雪から退避しているが

ひたすら怖い『霧の中の虎』マージェリー・アリンガム(著)山本俊子(訳)

戦争の傷痕が生々しく残るロンドン。戦争未亡人のメグは再婚を控えていた。ところが、そんなメグのもとへ送りつけられた数枚の写真は、亡夫の生存を示唆したものだった。単なるいたずらか、何か狙いがあるのか、あるいは本当に夫が生きのびているのか?動揺したメグは名探偵アルバート・キャンピオン氏とロンドン警視庁のルーク主任警部に相談する。写真の送り主の指示により駅に赴いたメグの前に現われたのは…姿なき敵を追い、霧のロンドンに展開される一大マンハント。キーティング、シモンズら斯界の達人が絶讃し

第一部 完だと!?『死亡通知書 暗黒者』周浩暉(著)稲村文吾(訳)

死すべき罪人の名をネットで募り、予告殺人を繰り返す劇場型シリアルキラー〈エウメニデス〉。挑戦状を受け取った刑事・羅飛は事件を食い止めようと奔走するが……果たして命を懸けたゲームの行方は? 本国でシリーズ累計120万部突破の華文ミステリ最高峰 中華SFはよく読むので中華ミステリにトライしてみた。 中華文化、問題などには触れていないエンタメ特化作品。警察に代わり悪人を殺す犯人を果たして警察は捕まえられるか? といったもの。紹介文や帯ではミステリと謳われているが、サスペンス。誰

『その手を離すのは、私』クレア・マッキントッシュ(著)高橋尚子(訳)

母親と二人で暮らす5歳の少年がひき逃げ事件で命を奪われた。小さな男の子の無念を晴らそうと、ブリストル署の警察官レイは部下のケイトらと共に事件を追うが、犯人は杳として見つからず、捜査の打ち切りを迫られていた。 一方、海辺の町に現れ身を隠すように暮らしていた謎の女性ジェナは、獣医師のパトリックと惹かれ合う。 それぞれのドラマが交錯し、事件解決が見えたその時、あまりにもおぞましい真実が浮かび上がる。 NYタイムズ、サンデータイほか英米各紙のベストセラーリスト入りをした超話題作が、満

『ガットショット・ストレート』ルー・バーニー(著)細美遙子(訳)

愛すべき悪人たちの騙し合い・・・ 刑期を終え出所したばかりの運び屋<シェイク>。 コケティッシュな嘘つき女<ジーナ>を救ったばかりに 大金と幻の遺物をめぐる奔走劇にまきこまれる。 追って追われて、最後に笑うのは誰なのか?―― ヒロインが嘘と裏切りの連続で笑える。完全に峰不二子。テンポ、会話、オチ、全て軽妙で、読んでいて笑顔が絶えない。素晴らしいエンタメ・クライム・ノヴェル。 出所したての主人公は真人間になろうと決意するも、しがらみから、ギャングのボスからギャングのボスへ車

『ケイトが恐れるすべて』ピーター・スワンソン(著)務台夏子(訳)

ロンドンに住むケイトは、又従兄のコービンと住まいを交換し、半年間ボストンで暮らすことにする。だが、到着した翌日に、アパートメントの隣室の女性オードリーの死体が発見される。オードリーの友人と名乗る男や、アパートメントの向かいの棟の住人の話では、彼女とコービンは恋人同士だが、まわりには秘密にしていたという。そしてコービンはケイトに、オードリーとの関係を否定する。嘘をついているのは誰なのか? 見知らぬ他人に囲まれた、ケイトの悪夢の四日間が始まる。ミステリ界を席巻した『そしてミランダ