見出し画像

イミテーション③

 家に帰って雑事を済ませた後、私はベットに横たわって考えていた。
 最近感じる違和感の正体について。

とりあえず今の状況について考えてみる。
これは私が選んだ道。今までそう思って生きてきた。
けど多分本当はそうじゃない————そう最近考えるようになった。

 私はいつも周りを見てきた。周りに合わせてきた。みんなの真似をしていた。それはもう必死に。目立ちたくなかったから。みんなが手を挙げたら私も挙げる。みんながおんなじ制服着てるから私もおんなじ制服を着る。みんなが大学行くから私もなんとなく大学に行く。みんなが。みんなが。
 だからしょせん真似事。考えればそうだった。JKも先にJKしてきた人たちを見てJKっぽく生きているんだよなぁ…………

 そこで私はあることに気付いた。 
 ことばも、行動も考え方ももしかしたら全部真似してるだけなのかも。私たちは自分で決めてるようで決めてないのかも。なんかそれって悲しいよな。
ひとしきり考えを巡らせている自分に気付いて私は微笑した。なんだか哲学者っぽいな。ひとしきり考えた後に一人でニヤリとする。
私にはこういう癖があった。
 
 
 今日は二時間目に生物の授業があった。いつものように退屈しながら聞いていた。けど、途中少しだけ私にとって興味を惹かれる話題があった。
「みんな、バイオミメティクスって知ってるかな?知ってる人?」
先生が聞く。
誰も手を挙げない。
「日本語だと生体模倣技術とかって訳されてる。こっちの方がわかりやすいな。その名の通り生き物の形とか機能なんかを調べて、新しいものづくりに生かす科学技術のことをいうんだ。身近なところだと、例えばサッカーゴールのネット。あれはハニカム構造といってハチの巣とかカメの甲羅でみられるな。ほかにも蚊の針を模倣した注射器とか、カワセミのくちばしを模倣した新幹線、コウモリの超音波を転用したレーダーやソナーとか身の回りにいっぱい生物の特徴が活かされてるんだ」
確かこんな感じのことを話していた。眠たかったけど、その話を聞いているうちに気付けば目が覚めていた。なんだ。人間は動物すら真似してるんだ。模倣———
手元にある電子辞書で調べる。
模倣:自分で工夫して作り出すのでなく、既にできているものをまねること。

そんな言葉があったんだ。おー私が昨日考えた「真似の法則」の語感をかっこよくしてくれそうな言葉があるではないか。模倣の法則。これについての本でも出版しようかなー。

続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?