映画 #1 「レミニセンス」
近未来、世界が水に沈んでしまい、人々が僅かな土地の中で暮らしている世の中で、退役軍人のニック(ヒュー・ジャックマン)が人々の記憶に潜入して事件の操作をする物語。
見る前にFilmarksの評価を見ていたところ、賛否両論な雰囲気だったが個人的にはとてもいい作品だった。(賛否両論なのもなんとなくうなずける)
また、主人公のニックも含めた各キャラクターが悪役でも「苦しんで死にたくない」など、それぞれ等身大に描かれているのが良かった。
時間の流れとしての「未来」と、物語としての「結末」
世界が水に沈みかかっていて暗い未来が待っているから、みんな過去にすがって生きている、というディストピアな世界観で、なかなか未来に希望を見出しづらい環境のニックたち。「未来はまだ変えていける」というような調子でなんとか未来に向けて希望を持って頑張る、みたいな話が多いが、この作品は、未来に向けて進むのも一つの「結末」だし、過去に"行く"のも一つの「結末」だと捉えているんだろうなと感じた。
最後の方にワッツ(タンディ・ニュートン)が、孫に対して「彼は過去へ”行く”ことを選んだ」「不幸があるから幸せがある」(セリフ若干うろ覚え)という話をしていて、ここがすべてを物語っているなと感じた。
ニックにとってはすべての真相を自分が知った上でメイ(レベッカ・ファーガソン)のいない「未来」は悲しみしかないから、「過去」のメイと一緒の幸せな時間に行く結末を選んだし、
ワッツにとっては子供と離れ離れになっていた「過去」から目をそむけていたから、それを乗り越えて子供と一緒にいる「未来」に進む結末を選んだんだなと。
映像としても冒頭と最後に記憶を見る装置の電源をニックがつける、というシーンが鏡の様にあって、劇中を「今」と捉えると、「結末」は未来と捉えることもできるし、過去と捉えることもできる、ということを暗に伝えたかったのかなと思った。
劇中で出てきてた「オルフェウスの物語」について
ニックがメイに対してオルフェウスがエウリュディケを冥界から地上に返す物語として途中まで語り、最後の結末のところでメイが「無事に生き返れたんだよね?」とニックに語りかけているシーンがあった。だが、このオルフェウスの話(ギリシャ神話)は本来、「地上に出るまで振り返ってはならない」という冥界の神ハデスの言いつけをオルフェウスが破り、エウリュディケは生き返れなかった、という話である。
だがあのシーンでニックはそれを否定しなかった=おそらく本来の話をニックは知っていたが、「幸せの最中に物語を終えたい」というメイの思いをくんだのと、ニック自身もそうであってほしいという思いからあえて否定しなかったのかなと感じた。
最後に、予告編でも使われていた"Save My Love"という曲がすごく良かったのでシェア。
最終更新:2021/09/18
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