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【映画感想】終わらない終末

※ネタバレ注意※


 Netflixで視聴。単純に最後まで飽きることなく楽しめた作品。間延びを感じさせる瞬間も確かにあったが、一貫して張りつめた空気が支配していたように思う。
 物語は見えざる敵からの攻撃に晒される2つの家族を軸に描かれる。と言っても、戦争もの、ディザスターものというよりは、極限状態の人間の心理、により焦点が当たっているように思う。加えて、所々に派手な演出のシーンも織り込まれており、大味にも薄味にもならない、全体的にバランスの良い作りになっている。(これは好みのわかれるところかもしれないが)

 日本語版で視たものの、原題「Leave the world behind」と表示されたので、「終わらない週末」はあくまで日本語題のようだと気づく。そもそも、原作は小説であり、題は英語版、日本語版それぞれ同じようだ。個人的には原題そのままの方が良いかな。直訳すると「世界を置き去りにしろ」あたりだろうか?確かにそのままでは微妙かもしれないが……。

 物語は序盤で、身の回りのデジタル機器が一斉に麻痺し、使い物にならなくなってしまう。iPadでドラマ(フレンズ)が視れなくなってしまうことをフックとし、それが最後に回収される流れは美しい。また、フェリーや飛行機がコントロールを失い、暴走してしまう様は、如何にデジタル機器に依存してしまっているかを我々に提示しているようにも思う。ただ、デジタル時代への警鐘と安易に取ってしまうのは表面的すぎるか。
 個人的には、(リアルであるかはどうかはさておき)テスラの自動運転車が突っ込んでくる演出は秀逸だと感じた。無人であるということも相まって、空恐ろしかった。演出的にはドローンで(これも果たして攻撃として有効かはさておき)、赤紙をばら撒くシーンも見応えがある。

 冒頭でも述べたが、本作はディザスター映画の皮を被っていながら、内実、その中で右往左往する”人間”にスポットライトが当たっている。仲違いしていた家族が奇妙に絡み合い、助け合ったり罵り合ったりしながら、終末の世を藻搔いていく。その様相が本作の醍醐味ではないかと思う。彼らは明らかな命を危険を感じながらも、純粋に手を取り合おうとはしない。そこに人間が持つ哀しさや脆さが色濃く映っている。
 やや非現実的ながら、最後に出てきた生存信者の老人が最適解なのだろうか。緊急事態においては、家族を除き、いかなる隣人をも信じることはできないのかもしれない。だがやはり、互いを信じあうことでしか戦争は回避できないのではとも思う。
 ぼくは、レコードの音に合わせてダンスする二人の姿に、人間の持つ強さと美しさをみた。人間は極限状態において尚、希望を見出そうとすることができる。いや、極限状態に置かれてこそ見出せるものもあるのではないだろうか。

 ラストシーンに至るまでの演出も素晴らしかった。核兵器の使用を思わせるキノコ雲を呆然と見つめるアマンダとルース。この辺りから終末を暗示するように無音が続く。無人の地下シェルターに潜り込み、お菓子を貪るロージー。そして、外界には目もくれず、フレンズの最終話を再生する――――。


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