久遠のあ

久遠のあです。三重→愛知→香川(2019~)。某メーカー勤務の技術職。趣味は島巡り、美…

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久遠のあです。三重→愛知→香川(2019~)。某メーカー勤務の技術職。趣味は島巡り、美術館巡り、ツーリング(休止中)、お絵描き(CLIP STUDIO)、カメラ(X-S10)、読書(小川洋子と川上弘美が好き)、映画(ミニシアター系、A24)など。最近、人狼も楽しんでます。

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2021年度個人的良かった映画

タイトルの通りですが、少し前置きを。 ぼくは子供の頃から、映画というものにあまり触れてこなかった。 (ジブリとかドラえもんとかポケモンとかそういう類のものは観た記憶があるし、普通に楽しんでたけど) 特にミニシアター系の映画というものは存在すら知らなかった。それがここ1~2年で映画館によく通うようになった。 きっかけは映画好きの後輩に誘われて観にいった「エイス・グレード~世界で一番クールな私へ~」という作品。決して派手な映画ではなかったけれど、登場人物のさりげない表情の

    • 【映画感想】梟

      ※ネタバレ注意※  予告を拝見したときからずっと楽しみにしていたが、まさしく期待を裏切らない作品だった。最初から最後まで無駄がなく面白く、丁寧に緻密に制作されていると感じた。 ポスタービジュアルもそう。キャッチーなデザインであると同時に、作品中に画として存在するだけでなく、物語としても重要な役割を果たすシーンであり、観賞中でも思い出して唸らざるを得ない。 そもそも、「昼盲症」という実際に存在する病に着目し、暗闇でのみ視力が宿るという設定を生み出し、「梟」というタイトルを付け

      • 【映画感想】アイアンクロー

        ※ネタバレ注意※  事実は小説より奇なり……これが史実を基にしたとは思えないほどに、悲劇的な物語である。尚、実際は更にもう一人兄弟がおり、同様に悲惨な末路を辿っているというのだから、本作はどちらかというとマイルドな内容になっているのかもしれない。   始めに書いておくが、ぼくはプロレスに全く明るくない。アイアンクローという必殺技もなんとなく耳にしたことがある程度で、フリッツ・フォン・エリックの名前も聞いたことがなかった。しかし、フリッツが活躍した時代を駆け抜けた世代の方々

        • 【映画感想】パレード

          ※ネタバレ注意※  特に前情報を入れずに、ネットフリックスで視聴。  毎回、Netflixプレゼンツでは思うことだけど、とにかく画が綺麗だなと。 セットや映像にお金がかけられてるのが良くわかるし、本作についてはセンスも良いと思った。主要メンバーが集う集会所は、現実とファンタジーの境目を漂っているような幻想的な佇まい。廃観覧車もバーカウンターも映画館もぼくのツボに刺さった。これらのセットがエンディング時には廃墟となる演出も、退廃的で美しい。  一方、設定やシナリオは少々粗

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        • nano.RIPE
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          【映画感想】ラバー、ストーカー、キラー

          ※ネタバレ注意※  Netflixのドキュメンタリーは良質なものが多いので、期待しつつ視聴。それを裏切られることなく、ドキュメンタリーであるのに映像は美麗で凝っており、流石といったところ。また、テンポ、リズムが素晴らしいと感じた。インタビュー、再現ドラマ、当時の映像が交互に淀みなく流れ、それにDM着信を模したピコン!がアクセントになっている。  前半部分はマッチングアプリを発端に整備士であるデイブがシングルマザーであるキャリの執拗なストーキングに悩まされる話。大々的にマッ

          【映画感想】ラバー、ストーカー、キラー

          【映画感想】マエストロ その音楽と愛と~その才の代償~

          ※ネタバレ注意※ Netflixで視聴。  これまであまり伝記映画を観たことがなく、音楽にも疎い。本作のレナード・バーンスタインも申し訳ないが存じ上げなかった。さてどう楽しもうかと思索しながら視聴開始。恐らくバーンスタイン氏と思われる老人のインタビューから幕を開け、彼の記憶を辿る様に時代は過去へとワープし、モノクロの世界へ。    途中までは一人の男の成功を描いた平坦な伝記映画かと失礼ながら肩肘をつきつつ鑑賞。バーンスタインとフェリシア、容姿端麗で才能あふれる二人の男女が

          【映画感想】マエストロ その音楽と愛と~その才の代償~

          【映画感想】ほかげ ~戦争は、終わらない~

           「戦争が、終わったんだ」  なんて憎いキャッチコピー。戦争は簡単には終わらないのだと叫んでいる。  戦闘機が飛び交い、砲撃の雨が降り、あげく核爆弾が弾ければ、国一つが一瞬で亡びる――――戦争から想起するこれらのイメージは間違ってはいない。けれど、もし仮にそれらを乗り越え、終戦を迎えたとしても、それで全てが解決するわけでは決してないのだということを本作は教えてくれた。  本作で描かれている全ては、形式的には終戦後の世界でありながら、紛れもない”戦争”だと確信できる。復員兵は、

          【映画感想】ほかげ ~戦争は、終わらない~

          【映画感想】PERFECT DAYS ~木漏れ日に揺れる~

           年明けから素晴らしい映画に出逢ってしまった。 大きな事件も事故も起こらないのに、一瞬たりとも画面から目が離せなかった。平山の日常は”映画にありがち”な派手なものではないけれど、平穏でもなければ、つまらないことも決してない。とても尊く、そして美しく彩られた日々。  特筆すべきは、彼が生きる世界はパリでもニューヨークでもサハラ砂漠でもアマゾンの奥地でもない、日本の東京の下町だ。これは、当然ながら東京の下町を卑下しているわけでなくて、ぼくたちが当たり前に接している、ともすれば見

          【映画感想】PERFECT DAYS ~木漏れ日に揺れる~

          【映画感想】終わらない終末

          ※ネタバレ注意※  Netflixで視聴。単純に最後まで飽きることなく楽しめた作品。間延びを感じさせる瞬間も確かにあったが、一貫して張りつめた空気が支配していたように思う。  物語は見えざる敵からの攻撃に晒される2つの家族を軸に描かれる。と言っても、戦争もの、ディザスターものというよりは、極限状態の人間の心理、により焦点が当たっているように思う。加えて、所々に派手な演出のシーンも織り込まれており、大味にも薄味にもならない、全体的にバランスの良い作りになっている。(これは好み

          【映画感想】終わらない終末

          【映画感想】ザ・キラー

          ※ネタバレ注意※   面白い、こういう殺し屋映画もあるのか。  全編通してマイケル・ファスベンダー扮するクリスチャン/ザ・キラーに焦点を当てて描かれる、殺し屋ドキュメンタリー、殺し屋密着24時である。  まず開幕の独白部分から異色を放っている。一般に、殺し屋と言えば自分を曝け出すことなく淡々と任務を遂行する、そんなイメージがあるが、果たしてそれは本当だろうか?  殺し屋だって一人の人間である。己の流儀があるし、自問自答もする。そう言わんばかりの長い独白。しかし、立ち振る舞

          【映画感想】ザ・キラー

          【映画感想】ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語

          ※ネタバレ注意※ Netflixで視聴。  ウェス・アンダーソンはアステロイド・シティで初めて出逢い、その独特で浮世離れした作風に驚かされた。淡いパステルカラーな色彩設計、観客を置いてけぼりにするようなスピード感、現実と虚構をふらふらする寄る辺なさ。慣れるまではやや抵抗感があったものの、そのお洒落で先鋭的な絵と、「よく分からなさ」がくすぐってくる探求心がなんとも癖になった。  二作目ながら、本作もまさにウェス・アンダーソン監督の作品。矢継ぎ早に語り手が変わってくスピード

          【映画感想】ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語

          【映画感想】まなみ100%

          ※ネタバレ注意※  良い意味で予想を裏切ってくれる映画だった。序盤は感情移入しにくい主人公の”ボク”に当惑させられながらも、観ている内に、そして観終わってからもじわじわと湧き上がってくる感情に……響いちゃったなぁ。  男女で感想というか評価が分かれる映画かも?とは思う。それはやっぱり主人公であるボク目線で話が進んでいき、このボクは万人に愛される好青年では決してないから。まなみちゃんに幾度となくプロポーズしながらも、他の女の子にもふらふら愛を振りまき、まなみちゃんへの想いす

          【映画感想】まなみ100%

          【映画感想】モンキーキング

           タイトルの『モンキーキング』は孫悟空の英訳ということで、日本語のタイトルをつけるとするなら『孫悟空』となるのだろうか。内容としては西遊記の前日譚であり、孫悟空がお釈迦様に幽閉されるまでの顛末を描く。(ぼくはこれまで西遊記にあまり触れてこなかったので、エンディングまで見て理解したが…)。3Dアニメとしての映像は美麗で、迫力もあって純粋に格好良い。突然2Dアニメが挟み込まれるのは、ぼくが大好きなアニメ『FLCL』で、急にコミック調の演出となったことを思い起こさせた。  しかし、

          【映画感想】モンキーキング

          【映画感想】CLOSE クロース

          ※ネタバレ注意※  シンプルでありながら、いやそれ故に、揺るぎない気高さと強度を誇る作品だった。最近、『トリとロキタ』、『トゥ・レスリー』、『インスペクション』、そして『クロース』と、徹底的に無駄を削ぎ落し、限られた登場人物の心情に真摯に向き合う作品が多く、ぼくはそれらに魅了されているなあ、と。クロースはこれら作品群の中でも、特に観客の心に訴えかけるものが大きいのではないか。それは、レオとレミの幼い二人を巡る物語には、誰もが子供の頃、一度は抱いたことがある感情を呼び起こす魔

          【映画感想】CLOSE クロース

          【映画感想】福田村事件

           関東大震災から100年目を迎える、今この時代に、この作品が世に出る意義は大きいと思う。あまり政治の事は語りたくないが、某官房長官が関東大震災時に「朝鮮人虐殺の記録がない」と発言したとか。この国は、100年前となんら変わっていないのだなと思い知らされた。  ストーリーは、朝鮮人への偏見と差別、部落への差別、そして一般市民の内に流れる狂気が暴走して実際に起こってしまった、凄惨な虐殺事件をテーマにしている。物語には多くの人物が登場し、複数の視点から描き出される群像劇となっている

          【映画感想】福田村事件

          【映画感想】パラダイス-人生の値段-

          ※ネタバレ注意※  「自分の寿命を他人に売却できますか?」  本作は、選ばれたドナーと呼ばれる人間が、自分の人生を他人に売却できる(あるいは購入できる)世界を舞台にしたお話。人生と言っても、事故や事件での死はカウントせず、あくまで自らの身体を老化させ、その分他人を若返らせることができるということ(逆もまた然り)。その理屈は、魔法やファンタジーではなく、科学的な施術によるもので、SF的なストーリーかと当初は思っていた。  物語の冒頭、一人の端正なスーツ姿の男性――マックス――

          【映画感想】パラダイス-人生の値段-