第七章 愛梨⑦
その日は、通常営業で平和に終わらせる事ができた。
最近は、何やら平穏無事に仕事が終わる事がない日が多かった気がするし。
愛梨に、電話をしてみよう。
ところが、携帯を何度かかけても愛梨は電話に出なかった。
コールは、鳴り続ける。
もう寝ちゃったのかな。
次の日、愛梨は出勤してこなかった。
愛梨、どうしたんだろう?
「よっちゃん!愛梨、何か病気だったん?」
「いや、分かんない。オレは、全員の結果見たわけじゃないし。電話してみたら?」
「うん……」
何だか、栞の時のようだ。
嫌な予感が脳裏をかすめる。
嫌だよ。
愛梨……。
「もしもし、愛梨?」
「梨紗?」
「どしたん?今日も休むの?大丈夫?」
「梨紗……大事な話があるから、今からうち来られない?」
これから、営業が始まる。
けれども、愛梨のこのテンションは尋常ではない。
「分かった。行くから待ってて!」
急いで電話を切る。
「よっちゃん!ごめん、あたし今日休むわ」
「へ?!ダメだよ!何で?」
「愛梨が心配なの!栞の事もあって、愛梨までいなくなっちゃったら、あたし、やっていけないよ」
「分かった。ただ、ちゃんとお客さんに謝りの電話を入れるんだよ?」
「はあい!」
愛梨の家には、数回行った事がある。
道は覚えている。
歌舞伎町からほど近く、小さなアパートが所狭しと建ち並んでいる。
徒歩で向かったあたしは、愛梨の家の前へ到着した。
てか、この時間なら押しかけ同棲している涙が寝ているって事はないのかな。
ピンポーン♪
ガチャッ。
「愛梨?大丈夫?」
愛梨の様子は、とてもではないほどにおかしかった。
一目見て、何かがあったのだと分かるほどに。
「……涙は?」
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