第十章 平和?!⑪
あたしも一哉も、当然ほろ酔い。
「しょうがねえなあ。梨紗、トイレに連れてってあげて」
「え、分かった。拓巳!立てるう?!」
拓巳を無理やり立ち上がらせて、トイレに向かわせる。
「飲まされ過ぎちゃったねえ、せっかくのバースデーなのに」
「でも……梨紗が来てくれて嬉しい。知ってた?一哉さんってね、自分のバースデーで潰れた事ないんだよ?」
え、知らなかった。
そんなに酒が強いって事?
拓巳は、トイレの便器に顔を突っ込むけれども思うように吐けないようだ。
あたしは、背中をさすってあげるくらいしかできない。
「ダメだ。それよりちょっと寝るわ。皆にありがとって伝えといて」
「え、ここで寝るの?拓巳?!」
「梨紗、愛してるよ……」
ムチャムニャと拓巳はそう言いながら、本当に眠ってしまったのだった。
「あれ、拓巳は?」
「トイレで寝ちゃいました」
「マジで?飲ませ過ぎたな笑」
なんて、一哉も空も優月さんも笑っている。
「じゃ、オレらは帰ります。お疲れ様でーす」
あたし達三人は、サムサラを後にした。
「一哉さん、店戻るの?」
「いや、このまま帰るわ」
「ほおい、じゃね。梨紗ぴょん」
「さいなら……」
ちょうど通りかかったタクシーを捕まえて、あたしと一哉は酔ってフラフラしつつも帰宅の途についた。
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