第十一章 復活②
あたしは、その足でそのままサムサラへと向かった。
拓巳の元へ。
「梨紗?!あ、この前はありがと!ごめん、潰れて……」
なんて呑気に喋る拓巳を非常階段へと連れ込み、思いっきりキスをした。
「梨、梨紗?!どした……」
そんな拓巳の間の抜けた言葉を遮り、再び拓巳の柔らかい唇にキスをした。
いつ、誰が扉を開けるか分からない非常階段で。
拓巳と、激しくキスをした。
「梨紗……オレ、本当に梨紗の事好きになっちゃうよ」
「好きになってよ……いいよ……」
「てか、もうずっと好きだった。逢う前から、ずっとずっと大好きだよ」
あたし達は、何度も何度も唇を重ねた。
「お帰り」
「梨紗、ただいま……」
あたしはテレビで朝のニュースをつけたまま、新聞を読んでいる。
一哉は、ホストとして話題に事欠かないように、番組欄から社会問題まで毎日眼を通しているのだ。
ホストの鏡だ。
「梨紗……」
「朝ご飯、ベーグル置いてあるから」
「昨日の事だけど」
聞こえないフリ。
もうこの際、聴覚がおばあちゃんになってしまった事にでもしようか。
「ごめん。イロかけてる子がいるから」
イロとは、客に疑似恋愛をさせる事。
色恋の事だ。
「別に気にしてないよ。あたしも拓巳とチューしたし」
「……は?」
「聞こえなかった?あたしも拓巳とチューしたから気にしないでって言ったの」
「いつ?」
「昨日。名刺ケース渡しに行った後」
「は?何やってんの?」
あたしの腕をグイッと掴む一哉。
新聞が、膝からバサッと落ちる。
「痛い」
「ヤキモチ妬かせたいのは分かるけど、そんなガキみたいな事すんなよ」
「オレは仕事でやってるんだからってもし一言でも言ったらあたし、出てくよ?」
「……」
「仕事って言ったら何でも済むと思わないでよね。そんなんで何が信用しろだよ……」
「梨紗、ちゃんと話そう」
今度は、あたしが黙る番だ。
「……分かったよ。イロはもうかけない。約束する。だから、もう拓巳にキスしに行ったりなんてしないで。ね?」
「分かりました」
「仲直りね、消毒!」
そう言って、一哉はあたしにチュッとキスをした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?