見出し画像

落ち込むたびに思い出す、『悔しみノート』

本当はいつものブログ(本と映画とゲームの感想ブログ)に読書記録として綴ろうと思ったのだけど、あまりに”自分”が抑えられなかったのでこちらに書くことにした。

ブログは『わたしが感じたこと』を『わたし以外の誰かに伝える』つもりで書いている。
けれど今回の『悔しみノート』に関しては、とてもじゃないが『伝える』ことなんて出来やしない。わたしはわたしのこの感情を消化するので精一杯だよ。


***

タイトルにも冒頭にも書いた通り、『悔しみノート』という本がある。
著者の”梨うまい”さんが、TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』に送ったお悩み相談がきっかけで生まれた本だ。

「私は何をどうしたらいいか分からず悩んでいます。いい作品に出会っては嫉妬に悶え、でも物作りに挫折して逃げ出した自分にはもう何もできないと落ち込む日々です……」——ラジオネーム・梨うまい

「今日からエンターテインメントで悔しかったやつ全部ノートに書いて! とりあえず『悔しみノート』の作成を命じる!!」——ジェーン・スー

『悔しみノート』帯より

そうして書かれた梨うまいさんの『悔しみノート』。それを祥伝社さんが書籍化したのだ。


わたしがこの本に出会った時のことは今でもよく覚えている。

書店員時代、新刊として1冊だけ入ってきたこの本。
文芸書担当だったわたしのところに回ってきたこの本を見た途端、衝撃を受けた。
あまりの衝撃にどこの棚に置こうとか考えるよりもまず、「これ中身は何が書かれてんだ」の方が気になりすぎて、思わず仕事そっちのけで冒頭数ページをその場で読んでしまったぐらいだ。

その後、一応仕事を思い出し1冊だけのそれを新刊コーナーに置いたけれど、2〜3日経っても変わらず同じ場所にあるそれに、わたしの方が我慢できなくなって見事にお買い上げしてしまった。発注はすぐにかけた。


***

実はこの本を読むのは今回が初めてでも何でもなく、既に何度も読み返した後である。まあ何度もと言っても発売してから3年以上は経っているので、最初の年以外は年1回読み返すかぐらいになっているけれど。

そうしてまんまと今年も読み返したわけですよ。『悔しみノート』。
落ち込むたびに読み返したくなる本だと思う。

そして読み返すたびにいつも思うのは、わたしがこれを読み返すことで生まれるこの感情は一体何なんだろう? ということ。

慰め? 安心? 傷の舐め合い?

とすると勝手に傷を舐められている梨うまいさん、正直すまないと思う。


***

 自分のペースで少しずつ頑張ろうと思いつつも、周りから冷たい声が聞こえてくるようで、恥ずかしくて、苦しいとも言えない。「何甘えたこと言ってるの? 何もしてないじゃん」
 ピーーーーーーーーーーーーーーって感じだ。あの医療ドラマの、心拍がゼロになったときのアレだ。

『悔しみノート』梨うまい 著(敬称略)

自己投影、と言うと何だか響きは良いよね。
「ああ、これはわたしだ」なんて。本を読みながら、気取っちゃって。

でもこんなの自己投影どころじゃないよね。グッサグサ刺さるんですわ。

そうやってこの本に刺されるたびに、「梨うまいさん、何でそんな風に己の心をザックリ切り落として他人に差し出せんの?」と思う。
これはこれで才能だよ。わたしはあなたが羨ましい。

もう引用はしないけれど、『談春 古住今来』のところも頭を抱えたくなる。
気になる人は読んでみてほしい。と言うかなんかもうとりあえず一度でいいから誰か読んでほしい。普通の人ってこれを読んでどんな気持ちでいられるもんなの?

何でこれ、こんな言語化できるんだろう。なんて読みやすくしてくれるんだろう。
これが才能ってやつなのか?

わたしはあなたが羨ましいよ。
だってわたしにはそんな勇気も希望もないからさ。


***

本が発売された当初は公式Twitter(現X)アカウントで梨うまいさんも時々ツイートしていたけれど、それもとっくの昔に止まってしまっている。
たまにアカウントを検索しては、梨うまいさんどうしてるかなと思ったりして。
正に本文に出てきた『バイト先の店長のツイートを見るのがやめられない』現象じゃん。いま気づいてちょっと笑ってしまった。

とりあえず話の中で何度も出てくる星野源への悔しみについて、そう言えば例のガッキーと結婚した時、梨うまいさんどうなったんだろと今更ながらに思い立って(芸能人の結婚報告に興味がなさすぎる)(めでたいとは思うけれど)公式Twitter(現X)を見てみれば

まあまあ想像通りで、これもまた笑ってしまった。


***

わたしはついにアラサーを過ぎても生きづらいままで、ほんとに40歳にもなればこういうのは寛解する(※中野信子さん談)んか?とか思ったりしてるけど。

梨うまいさんはどうだろうか。お元気だろうか。
誰かの手は握れたのだろうか。

そんなことばっかり気になって仕方ない、今日この頃です。

この記事が参加している募集

読書感想文

頂いたサポートは活動資金としてありがたく使わせていただきます…!