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追われる恋もいいけれど、追う恋の方がもっと楽しい

恋愛をするなら、惚れるより惚れられる方がいいな、と思ったことがある。
むかーし、彼氏がいたときにマッチングアプリで出会ってリアルした相手。
彼とは友達関係として仲良くなろうと思っていたけれど、彼は僕の顔がドンピシャで好みだったらしく、自分と付き合ってくれませんか、と告白されてしまった。
付き合っている相手がいることを伝えないまま会ってしまった僕も悪いのだけど、まさか自分の顔に需要があると思っていなかったので、告白してくる人もいないだろうと思ってしたリアルで、まさかの告白をされてしまった。
当時の彼氏とは色々あって気持ちが冷めかけていたこともあり、このまま浮気して乗り換えてもいいかな、なんて罰当たりなことを考えたけれど、当時純粋だった僕は浮気することはできないし、なんとか彼氏と頑張ろう、というかしがみつこうとしていたので、理由をつけて彼からの申し出を断ることにした。
結局、付き合っていた彼氏とはうまく行かずその後すぐに別れることになったのだけど、告白してくれた彼とも連絡がつかなくなっていたので、正直大きな魚を逃した気分になったのは間違いない。

あの時、告白してくれた彼と付き合っていれば、その後どうなっていただろう、今の人生はどうなっていただろうとふと考えることがある。
自分はモテる人間ではないと思っていたところへ、いきなり舞い込んできた告白。
しかもドンピシャで好みのタイプと言われることなんてそうそうないはずだから、倫理とか道徳とかそんなもの打ち捨てて、衝動のままに彼に乗り換えてしまっても良かったのでは、と今では思う。
好きだと言って寄ってくる相手と一緒になると、ずっと大事にしてくれると思うから。
追うよりも追われる恋に身を任せてみたら、幸せになったかもしれないじゃない?

でもふと思うのだ。
追われるのもいいけれど、相手を落としたいと追う恋もまた、楽しいんじゃないかと。
昔、僕はちょっと気になるノンケの同僚に恋をした。
ゲイからすれば、ノンケに恋をしたところで報われることはない。
恋愛関係になることなんてドラマじゃない限り無理だろうし、手を出すことなんて天地がひっくり返るような出来事がないと無理だろう (というか望みがない) 。
だから僕は、その人の友達リストの中で上位に入れてもらえるようになろうという目標を自分の中で掲げ、いろいろと頑張った。
話を振ったり話を親身に聞いたり、差し入れを持っていってあげたり仕事を手伝ってげたり、一緒に映画に行ったりご飯に行ったりなんかして、それはもう猛アピールという名の親密さを演出して、友達の中の友達の存在になろうと頑張っていた。
その時の僕はそれこそ追う恋をしていた。

好きな人に振り向いてもらおうと追っているときの自分は、なんだかんだ言って結構充実していたような気がする。
どうしたら彼を振り向かせられるだろう? どうしたら心を開いてくれるだろう? 何をしたら喜んでくれるだろう? とそれはもう夢中になって一緒にいる時間を大事にして楽しんでいた。
最終的にその人とは仲良くなることはできたけど、なにか超えられない天井がどうしてもあって、これ以上は無理かもしれないと思って頑張るのはやめたけれど、好きな人を追っている時間はとても充実していた。

好きだ! と言われて追われる恋もいいけれど、自分が好きになって追う恋の方がより熱が入るかもしれない。
追うというのは、相手に憧れがあるから。
一見手に入らなさそうな相手を自分のモノにしたい、相手に近づきたい、同じ土俵に立ちたい、そんな憧れが相手に近づくためのエネルギーになる。
でもそれが報われないようならやっぱり面白くないから冷めてしまう。
好きになったら負けというのは、相手にアドバンテージを取られるから。
どうせならお互いが追う恋をできればいいけれど、どちらかに偏ってしまうんだろうなあ。

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