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観た映画の感想 #90『みなに幸あれ』

『みなに幸あれ』を観ました。

監督、原案:下津優太
脚本:角田ルミ
出演:古川琴音、松大航也、犬山良子、西田優史、吉村志保、橋本和雄、野瀬恵子、有福正志、他

祖父母が暮らす田舎へやって来た看護学生の“孫”は、祖父母との久々の再会を喜びながらも、祖父母や近隣住民の言動にどこか違和感を覚える。祖父母の家には“何か”がいるようだ。やがて、人間の存在自体を揺るがすような根源的な恐怖が彼女に迫り……。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/98432/

古川琴音さんをはっきりと認識したのは遅ればせながらドラマ版『岸辺露伴は動かない』の「ホットサマー・マーサ」の回だったんですが、その時からずっとホラー映画の主演やってくれないかなーと思っていたんです。
なんていうか、すごくホラー映えしそうな不思議な目力と顔を持ってる方だなーと。怖がるのも怖がらせるのもすごく似合いそうだし、恐怖演技がただのリアクション芸みたいにならないだけの演技力も勿論ある。

実際今作でのホラー映えは最初から最後まで絶品で、観てる間ずっと「こ~~~いう古川さんが見たかったんだよ~~~!」って感じで、彼女を見てるぶんにはすごく楽しかったんです。

ただ、肝心のシナリオに関しては正直僕には合わなかったというか、何を見せられてるんだろう……っていう内容でした。

序盤まではすごく好みのホラーだったんですよ。
具体的には”孫”が2階にある鍵のかかった部屋を覗こうとするといつの間にか背後におばあちゃんが立っていて、無表情のまま走ってきたと思ったら何度もドアに激突するくだり。「なんなのかは分からないがとにかく異常なことが起きている」っていうホラー的な怖さは個人的にはここがピークで、この後はどんどん話に乗れなくなっていく。

例えば中盤、ある目的のために家の中を祖父母に見つからないように隠れたり、縁側に逃げたりしながら2階に登っていくっていう『バイオハザード7』のベイカー邸みたいなくだりがあるんですけど、この時点で”孫”はもう祖父母が何かとてつもない異常性を隠してることには気づいてて、その直後に起きる、あるショッキングな出来事を目にしてその疑念はますます確信に変わっていってるわけです。なのにその次のシーンでは”孫”は家に戻ってるんですよね。
まあ一回だけなら後から合流した両親と弟を説得するためとか理由は考えられなくもないけど、その後も「みんなおかしいよ!」って言いながら食卓についたりしてるんですよね。逃げようと思えば全然逃げられるんですよ、この家。バイオ7みたいに監禁されてるわけじゃないし、『ミッドサマー』のホルガ村みたいに外界と隔絶された秘境ってわけでもない。”孫”は電車と徒歩でこの家まで来てるんだし。
この後も終始こういう感じで、村の異常性に対しておかしいとは言うけど特に逃げるでもなく、というかささやかに抵抗する素振りは見せるんですけど、結局家に戻ってくる。だんだん異常に飲み込まれている描写と言えばそれはそうかもしれないんですけど、そう思わせるにはちょっとあまりにも説明が足りてなさすぎる気がするんですよね……

その割に、途中でやたら気合いの入った不条理ギャグみたいなシーンが挿入されるのはどういうバランスなんだろう……っていうのも個人的にはノイズになりました。パンイチおじさんのダンスシーンとか。なんというか、TRICKみたいなことやろうとしてスベってるみたいな。

それと、全体的に説明不足で結局何が言いたいのかはぐらかされてる感じはあるんですけど、でも劇中で起きることの中で大きい意味のある出来事に関しては予想がつくものばかりだったのも物足りなかった原因かもしれません。山奥の叔母さんは多分こうなるんだろうなーと思ったら実際そうなるし、幼馴染くんは最後にはいわゆる因習村モノのセオリー通りになるんだろうなーと思ってたら実際そうなるし、そして”孫”も最後にはそうなるんだろうなーと思ってたら実際そうなる。シナリオに点と点はあるけど、その間の線が細すぎるというか薄すぎる感じ。

ちょっと期待値が高すぎたのかもしれないです。
「古川琴音のホラー」を観られたのは本当に良かったんですけど。

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