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観た映画の感想 #61『グランツーリスモ』

『グランツーリスモ』を観ました。

監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ザック・ベイリン、ジェイソン・ホール
出演:アーチー・マデクウィ、デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム、ジャイモン・フンスー、ダレン・バーネット、ジェリ・ハリウェル・ホーナー、平岳大、ヨシャ・ストラドフスキー、他

ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。想像を絶するトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、ついにデビュー戦を迎える彼らだったが……。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/99416/

いやーねー、もうね、本っっっ当に良かったです。(結論)
映画よく観る知り合いはリアルにもSNS周りにもそれなりにいるんですが全然盛り上がってなくて、ちょっと勿体ないよ!

まずこれ、「ゲームの実写化映画」ではないんですよ。
「グランツーリスモにまつわる一人のゲーマーの一風変わった、そして信じられないサクセスストーリー」の話。なんで原作としてのグランツーリスモを知らなくても全然問題ないし(僕も1作目を少しやったことがある程度)、くすぶってる若者が夢を掴むまでの成長譚として、または同じくくすぶってるおじさんがもう一度夢に挑戦する物語として、要するにモータースポーツを題材にした人間ドラマとして観られる。テイストとしては『フォードVSフェラーリ』あたりに近いと思います。

型破りなチームが最強チームに挑むっていうストーリーラインだったり、クライマックスのレースがル・マンだったりっていうあたりはフォードVSフェラーリっぽいなーと思って観てました。

で、そもそも僕が(原作ゲームにはそんなに馴染みがないのに)この映画に興味を持ったきっかけっていうのは「えっ!? ブロムカンプがゲーム原作の映画を!?」ってとこからだったんですが、本作のテイストでいうならこの人選大正解でしたね。車を一つの機械として表現するっていう映像表現にブロムカンプのメカフェチがピッタリ。予告でも使われてる、実際のレース場を走ってる車が部品の一つ一つまで分解されながら展開していきつつゲームしてる自室にフェードして、そこから更に映像が逆回転するみたいに部品が組み上がりながらレース場に戻っていくシーンとかフェチ全開で凄く良い。

それ以外にもゲームカフェでゲームしてる時にもゲーミングチェアの周りにホログラフィックな車のCGが重なってたり、レースシーンでも実際には見えるはずもない「勝ち確のコース取りのライン」をコース上に見せたりとか、現実の世界の上にテクノロジーをさらっとレイヤー表示するみたいな表現が上手いんですよね。

出演俳優の演技もみんな良かったんですけど、GTアカデミーの監督として主人公達を鍛えるジャック・ソルター役のデヴィッド・ハーバーが圧倒的に良かった。昔は名レーサーだったらしいがなんか訳ありで今はくすぶっていて、「ゲーマーをプロのレーサーにする」っていうダニー・ムーアのプロジェクトにも最初は全く乗り気じゃないしなんなら「ハッ(鼻で笑う)」くらいの感じだったのに、ヤンの才能を徐々に認めていってからはどんどん信頼関係を築いていって最終的には本物の師弟になる。こんなおじさんみんな好きになっちゃうよ
終盤に起こる、ヤンを襲うある悲劇的な出来事をめぐる二人のやり取りとか、その時のヤンへの気遣いに溢れる台詞と行動とか普通にぼろぼろ泣いちゃった。こんなおじさんみんな好きになっちゃうよ……!(2回目)
カセットテープでBLACK SABBATHを聴いてるっていうアナログさも絶妙で良い。今のところ今年の最優秀ツンデレおじさんは文句なしで彼。

あとは主人公以外のレーサー候補たちのキャラもよかったし、アカデミーを落選して去っていく候補生も当然いるんですけど、それだけで終わらないところが熱いんですよね。先に述べた通り劇中のクライマックスで挑むレースがル・マン24時間レースなんですけど、ル・マンってレーサー3人で交代しながら走り続けるレースなんですよ。じゃあレーサーがあと2人必要になる、っていう時にどうするか……ここで「アカデミー」っていう場が活きてくるわけですよ! 熱すぎる~!!

映画はめちゃくちゃ良かったんですけど、一つだけ不満というか「こうしてくれたら文句なしに最高だったんだけどなぁ~!」っていうところがあって、それはMoon Over The Castleが流れなかったことですね。
正確には映画前半の山場でサビのメロディが一瞬だけアレンジされた劇伴として流れるんですけど、やっぱり期待してたのは”あの”Moon Over The Castleがそのまま流れることだったんですよね……「ゲームそのものの実写化」ではないから曲もそのまま使うことはない、っていうのも理屈としては分かるんですけど、せめてスタッフロールで流してくれたら最高な気分で劇場を後にすることもできたと思うんですよ……
ちなみに、僕が見た劇場は日本語吹き替え版の上映がなかったので、T-SQUAREが手掛けた日本版オリジナルテーマ曲は聴けてません。これも日本版のみとは言わずなんなら正式にテーマ曲をオファーしても良かったんじゃないかなあ。

ともあれ、今やってる映画の中では一番ストレートに盛り上がるしホロリとくるし熱い気持ちになれる作品じゃないかと思います。そして、車が活躍する映画はやっぱりエンジン音を大音響で体に浴びられる映画館で観るのがおすすめ。この体験を逃すの勿体無いですよ!

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