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観た映画の感想 #97『ボーはおそれている』

『ボーはおそれている』を観ました。

監督、脚本:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ヘイリー・スクワイアーズ、ドゥニ・メノーシェ、カイリー・ロジャース、アルメン・ナハペシャン、ゾーイ・リスター=ジョーンズ、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン、他

日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/99338/

すっっっっっっっっっっっっっっっげーーーーーーーーーーーーーーーーー変な映画でした。「俺は一体何を見せられてるんだろう…?」が3時間続く。間をたっぷり目に取ってる映画だし、正直途中でちょっと退屈だなーと思わなくもなかったんですけど、でも終わってみると意味が分からなかったアレも退屈に思えたソレも全てが”この”結末の為に用意された計算ずくのものだったんだ! っていうのが分かるし、そうなると全てが分かった状態でもう一度観たくなるというアリ・アスター節全開の映画でもあって。『ヘレディタリー』『ミッドサマー』とはまるでテイストの違う映画だけど、この最後まで観るとアハ体験のようにスッキリする感覚は前2作とも共通してて、これはもうアリ・アスター作品に強烈に刻印された作家性だと思うんですよね。

最初のシーンからしてもう「らしさ」全開だったと思うんですけど、カウンセラーのおじさんがドアを開けると向こうにボーが立っている、そのカットのドアがあって、その周辺の壁に絵が綺麗な間隔で飾ってあって、ドアの奥にボーが所在なさげに立っていて……っていう人と物のちょっと几帳面すぎる配置の仕方が「うおーアリ・アスター映画っぽい構図!!」っていう。これだけでもうテンション上がっちゃうんですよね、ファンだから(笑)

これに限らず、引きの画でもとにかく全ての人物・物がそこにあるべくしてあるような配置だなっていう感覚になる画が今作はすごく多くて、これってシナリオのキモの部分、つまりボーの人生は全て母親に用意されて管理されていたものだったっていうのとも通じてると思うんです。

あとは今回は前2作のようなホラーじゃなくてどっちかというと不条理ギャグというかブラックなコメディだと思うんですけど、酷い目に遭い続けている人って客観的に見てると面白くなってきちゃうんですよね、不謹慎だけど。「いくらなんでもそこまでやる?!」とか「いやそうはならんやろ……なっとるやろがい!」みたいなことがずーっと起こり続ける。なんであのおじさんは風呂の天井に張り付いてたんだろう……とか。あそこ笑っていいシーンですよね?

それに加えて今回は明らかにギャグシーンとして入れ込んでる笑い要素もあるなーと思ってて、今作で一番笑ったのがボーとエレインのベッドシーンなんですけど、いかにもそういうドラマのその手のラブシーンで流れそうなバラード(後で知ったんですけどマライア・キャリーの曲みたいですね)を、映画のBGMとしてではなくエレインのスマホのSpotifyで、その場で鳴っている音楽として流す(しかも途中で仕切り直してもう一度最初から流す)。で、エレインが腹上死してボーがベッドから転げ落ちて、最初にするのがエレインのスマホから流れ続けてる音楽を止めることっていう。そこは冷静なんだ……って。

あと今回も話の通じないタイプの家族(母親)に人生をめちゃくちゃにされる話でしたけど、やっぱりアリアスター監督って「家族=良いもの」っていう価値観嫌いなんだと思うんですよね。インタビューとかだと僕は家族との関係は良好だよーとか言ってますけど。

中盤の、『オオカミの家』監督コンビが手掛けた演劇パートの部分とか細かい背景美術とか、1回じゃ観きれないとこがありすぎるしもう何度かは観に行きたいです。たっぷり睡眠とって体力満タンにした上で。

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