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観た映画の感想を綴る #4『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を観てきました。
(以下ネタバレを含みます)

最初に結論だけ言ってしまいますと最高でした。
今までの実写映画版の中で一番好きまである。

原作もこれだけ有名で息の長いシリーズで映像化も散々されている作品なので、それぞれに「求めるバットマン像」みたいなものがあると思うんです。ド派手なアクションとか、ガジェットてんこ盛りのバトルを期待していた人には今回のバットマンは物足りないかもしれないです。僕は過去作も(「好き」の濃淡はあれど)どれも好きなんですけど、じゃあ過去の映画化作品と比べて今作がなぜそこまで気に入ったかっていうと、バットマンというヒーローにとって物凄く重要な要素が今までで一番しっかりと盛り込まれていたからで。

それはバットマンは「恐怖」を武器にするヒーローだということ。
要するに今回のバットマン、実写映画史上最もバットマンが怖いバットマンなんですよ!

まず初登場シーンからして怖い。
「怖さ」描写で何がシビれたかってバットマンの足音なんですけど、今回のゴッサムシティー、作中通して天気がほぼ雨。夜はだいたい大雨。
なんで道路も常に水浸しなわけですけど、その水溜まりを踏む水音と、重いブーツの靴音と、金属が鳴る音が混ざった「ズシャッ……ズシャッ……」という足音がもう怖いのなんの。足音だけであそこまで(あっなんかヤバい奴来るな)って印象を抱かせるキャラクターなんて仮面ライダーBLACKのシャドームーンかこのバットマンかってくらいですよホント。
そんな足音を響かせながら何も見えない暗闇の奥から少しずーつ登場する様も怖いのなんの。過去の作品群以上に暴力に躊躇がない(ザコ強盗にすら「そこまで殴る……?」ってちょっと引いちゃうくらいマジでタコ殴りにする)のもあって場合によっちゃどっちが悪役なんだかってくらい怖い。でもそれもバットマンというキャラクターの大事な部分ですよね。傍から見たら狂人っていう。

ロバート・パティンソンのブルース・ウェインも想像以上に良かった。
前任のベン・アフレック版ブルースが超絶マッチョだったのもあって観る前はちょっと線が細くないかなー? と思ってたんですけど、そもそもこれはバットマンになりたてというかバットマンとして「完成」する前のお話だから、肉体的にもまだ発展途上って気もしますし何より過去イチ神経質そうで病んでて良い。今までのブルース・ウェインなら大体やってた慈善事業とか豪華なパーティーもやらないしプレイボーイ的な振る舞いもないし、バットマンじゃない時はずっと自宅のタワーかバットケイヴに引きこもってていつも顔色が悪くて常に睡眠時間足りてなさそうな目をしてて。

いいですよね、死んだ目をしたイケメン

あとこれは完全に個人的な好みになっちゃいますけど今回のバットマン、普通に立ってる時の立ち姿が歴代で一番カッコイイ。

セリーナと会話してる時とか特にそうなんですけど、ロバートが高身長なのもあって人とか物を見るとき基本的に少し見下ろす目線になるんですよ。その時の背筋がまっすぐ伸びてて首だけが少し下がってる姿勢がホントにバッチリ決まってる。特にそれを真横から映してるアングルの時が最高にカッコイイ。バットシグナルのビルで佇んでる時なんかもそういう姿勢でそういうアングル多めで眼福でした……

セリーナ役のゾーイ・クラヴィッツを筆頭にその他のキャストも良かったんですけど、その中でも飛びぬけて良かったのはやっぱりリドラー役のポール・ダノですよ。心底気持ち悪いニヤつきかた(褒めてる)とか、話してるうちに自分に酔っちゃって声がデカくなっていく感じとかホント最高。『バットマン・フォーエバー』でのジム・キャリーのリドラーも大好きなんですけど、あれはやっぱりリドラーである以上にジム・キャリーの平常運転(というか顔が緑色じゃないだけのマスク)なので……

今回のリドラーのキャラクター像もでしたけど、ああいう「持たざる者代表」とか「持たざる者焚き付け係」みたいな、個人的な復讐を拡大して世界を破壊したがるヴィランって最近多いじゃないですか。マーベルでも『シビルウォー』のジモとかそうでしたしDCでは『JOKER』で同じようなことやったばかりですし。なんで真新しさって点では見劣りしちゃうのは確かにそうかもしれないんですけど、今作はバットマン/ブルースも戦う動機が復讐だったんで、対比させる為に敢えてそうした感じもあるのかなと。

むしろそういう対比を作ることで、犯罪者をボコボコに痛めつける以外に戦い方、弱者の救い方を知らなかったブルースがそれ以外の救い方に目を向けられるようになる、狂人からヒーローへの完成に一歩近づくって物語だったと思います。クライマックスのシーンでバットマンが最初に手を伸ばしたのが、境遇的には過去の自分そのものと言ってもいい前市長の息子だったのなんて象徴的ですよね。

ちなみに字幕と吹き替え両方観てきましたけど吹き替えも最高でしたよ。
ひたすら暗い櫻井孝宏さん、人間性がまるで読めない石田彰さん、健気なファイルーズあいさん、アドリブ全く挟んでなさそうな(笑)千葉繫さん。ペンギンは吹き替えのほうが若干愛嬌が増してるかも。

笑いどころが一つもないしひたすら重苦しい空気感と音楽が続くし上映時間3時間でカロリーもかなり高い映画ですけど、とにかくツボにはまりっぱなしの一作でした。なんか上手いこと逃げおおせたペンギンとか最後にちょっとだけ出てきたアイツ(名前分からなかったけど観た人なら10人が10人これアイツだろ!って分かるはず)の今後の絡みも気になるし、次回作以降の構想もあるみたいですし続きが早く観たくなる映画でした。面白かった!

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