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(制作の中で)つくるよろこび

制作を続けて10年

美術大学を卒業したのが2014年3月。あっという間に10年経ちました。
気が付けば、今だに制作活動を続けている少数派です。

作家として続けている人の多くは、続けてきたことを肯定的に語ります。続けたからこそ成功したわけですし、成功したからこそ語りたくなる。

美術に限らず、何かしらを続けてきたクリエイターたちのインタビュー。私はそういった類を真面目に読む人間でした。インタビューだけでなく、自伝本もよく読みました。
読む事で励まされてきた側面も大いにありながら、同じくらい自分との差異に苦しめられたこともありました。時代も環境も違う人と、全く同じ道は辿れないにも関わらず……


2024年現在の私は、作家として売れているわけでもないけれど、実績が全くないわけでもない、新人ともベテランとも言いがたい位置にいる人間です。
今後どうなるかはさておき、今現在は非常に半端者な立場だからこそ、書き記せることもあるのではないかなと思います。


卒業から10年を経て

美大を卒業し10年という月日を経たことで、わかってきたこと。

続けることが必ずしも偉いわけでもないこと。
いつまでも、がむしゃらだけでは前に進めないこと。
無理のツケは必ず返ってくること。
運もタイミングもあるし、努力で覆らないこともあるということ。
etc……

いずれも私が導き出したという独創性はないです。先人が口を酸っぱくして語ってきた教訓に「自分だけは例外」だと抗ってきたものの、時が経つに連れて実感を帯びてきてしまった。そんな普遍性のある気付きだと感じています。

普遍的な事を雄弁に語れるわけもなく。そんな私でも、自分で導き出せた10年物の収穫が一つだけあります。
というのも、最近ようやく自分の信念たり得る核にようやくたどり着けたのです。

それは、「つくるよろこび」を持つ、という事。


つくるよろこび


この10年間、制作だけは続けようと努力してきました。
それでも、つくることへの虚しさや恐怖、義務を感じてしまう事が度々ありました。創作意欲を枯らすまいと必死に抵抗しつつも(インタビューや自伝を読み漁った事が活きてはいます)、常に空回りしている感覚がつきまとう。

このままでは良くない。でも何をどうすれば良いのかわからない。誰かに教えを乞うたり、書物から言葉を探したり、思考を巡らしてみたり。何度かこれではないかという着地をみせるも、すぐに地盤はぐらつく。再び奔走する。この繰り返し。

長きに渡り振り子のように右へ左へ揺れ動く感情に翻弄されながらも、時の流れとは偉大です。ちぐはぐな感情も次第に落ち着き始め、振り幅も徐々に小さくなっていきました。そして振り子の中心にあった「まずは何よりもよろこびを感じながら制作しよう」という自分の核となるものを視認できたのです。

作家にとって制作は尊い行為といえます。しかし、制作に前のめる事は必ずしも「つくるよろこび」につながるとは限りません。
制作を頑張るあまり、日常を追い詰めてしまう。創作には苦悩がつきものという先入観も相まってか、不幸にも日常を追い詰めるという"努力"が続いてしまうと「つくるよろこび」は離れていきます。失ったよろこびの代替を埋めるために、制作に向かう。"夢中"の履き違えによる負のスパイラルが何より私を苦しめていたのかもしれません。
(作家の成功譚に触れすぎた弊害もありそうです)

制作は常に日常生活の延長上にあると思っています。制作と生活のバランスは難しいですが、生活に支障をきたさない程度、せいぜい切り詰めるまでに留める。この線引きは、"よろこびを伴う"制作を持続可能にするために不可欠だという事が、10年かけてようやく気付けました。

おわりに

10年かけてようやく導き出した私にとっての信念「つくるよろこび」。
だいぶ、だいぶ遠回りしました。我ながら要領悪いなぁと思います。
でも私にしてはだいぶ上出来な"発見"です。
「自分(の気持ち)を大切にする」という、本来持っていたはずのものを、何度も見失なったものの、ようやく取り返すことができました
(あくまで、「制作」に限った話であり、あらゆる事に適応できるほど器用ではありません)。

とはいえ、現時点では10年かけてようやく導き出せたところなので、実行に移すのはこれからです。
これ以上語っても、意識だけが先行しそうなので、この辺りでおしまいにしたいと思います。


今後も、失敗視点から思った事をつづっていこうと思います。
成功譚よりも私の性に合いますし、誰の役に立つかはともかく貴重だとも思います。
作家のブランディングとしてはどうかなぁとは思いつつ…


お知らせ

2024年4月1日より町田駅前「町田パリオ」にて個展を開催します。
「作るよろこび」に立ち返った作品が並ぶ展示です。


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パリコレッ!ギャラリーvol.31
小林大悟個展「ハポン イ メヒコ 日本⇄メキシコ、行き交う空想」
会期:2024年4月1日(月)〜8日(月)
時間:10:00~18:00
  <レイトオープン>4月5日(金)20:00まで
 ※最終入場30分前まで
会場:町田パリオ 3F ギャラリー・パリオ
料金:入場無料
特別イベント(要予約)
【発見!私の日本画制作】
日 程:4月6日(土)・4月7日(日)
時 間:13:00-14:00(1時間)
料 金:¥2,500(税込)
定 員:各6名
対 象:5歳以上(未就学児は親同伴必須)
ご予約:パリオ管理事務所 TEL 042-725-3710
   (月〜土/10:00〜18:00*年末年始は除く)

本展では「ハポン イ メヒコ」
スペイン語で “メキシコと日本” をテーマに
小林氏が、2023年に半月程滞在した
メキシコで魅せられた考古物や民芸品、民画
元より影響を受けていた日本の「大津絵」など
双方の考古物、民芸品から得たイメージを広げながら、
描いた絵やドローイングを展示いたします
様々な生き物が行き交う空想の世界をお楽しみください
子供から大人までの3世代が
「日本画」を気軽に体験・楽しむことができるワークショップ
【日本画画材を使用し。作品をつくってみよう!】
も開催!みんなで一緒に自分だけの素敵な
「日本画(「まちだ画」かも!?)」を探してみましょう

詳細
https://www.pario-machida.com/topics/event/14303

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