C.G.ユングを詠む(002)-自伝
こんにちは。
C .G.ユングについて先回から書き始めたというよりメモり始めた。
読みやすい本がなかなか見つからなかったが、日本では、ユング研究では第一人者だった故河合隼雄先生が表された「ユングの生涯」がよかったのでこれを元にしていく。
ユングのメモを作ろうと常々感じてはいたが、踏み切ったのは先回も書いたように、天外伺朗さんの「運命のシナリオ」を読んだことによる。
「運命のシナリオ」の口絵「無意識層に巣食うモンスターたち」に、ユングの元型の階層が加えられたことが大きい。
それを、僭越ながらモンスターから意識層に着目して書き換えた図を、「意識と無意識の階層構造」として、描いてみた。
これを描いてみての気付きとしては、世の中には多くの心理学者、心理療法家、精神科医がいらっしゃるが、どの階層まで取り扱っているのか違いがあることが理解できる。
河合隼雄先生の「ユングの生涯」からのメモの続きに戻る。項目名称は底本とは違っている。第1項は前回に掲載。
2.ユングの自伝
ユングは自伝を書きたがらなかった。が、自分個人の体験を遺すだけではなくて人類共通の普遍性を持つと思われる無意識の世界の出来事を書き遺そうとした。
生前のユングを知る人の印象では、著作でしかユングを知らない人の抱く”聖者”という印象からは程遠かったらしい。
実存的変容の域に達した人が、聖人というか温厚な人、人当たりの所謂良い人になるかというと違う、内面から出てくるものを抑圧せずに出してしまい、むしろ遠慮ない性格に変わったと思われることと共通していそうだ。
3.ユングの故郷スイスについて
ユングはアーリア人、つまりはドイツ系のスイス人だった。スイスというと永世中立国、直接民主制というイメージが強いかもしれない。意外なことに女性参政権は1971年まで認められなかった。こんな結果もあるが、政治という合法的な戦いを派手に行い、論戦を通じて相互理解に達し、統合を保つ。それが、スイス。
国民皆兵制だから、必ず兵役の義務がある。これが、ナチスドイツがスイス侵攻しなかった理由に挙げられている。
そして、多様性の国。国語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュの4つある。こうした多様性を認めつつ統一国家を形成している。
ユングの心理学を理解する上では押さえておくといい背景である。
4.両親の影響
無意識についてとなえ始めたことでは先輩に当たるジークムント・フロイトがいる。
フロイトとユングでは、家庭環境、特に両親の性格が二人の学説の違いに大きな影響を与えているという。
それから、1879年には、ユングの母親は離婚別居している。
5,三歳で見た六十五歳まで秘密にした夢
この夢は、ユングが、至高の善の神のイメージを単純に受け入れさせない原因。神も両面性を持つという、生涯のテーマの源になった夢。神は善のみの存在ということをユングは受け入れ難かった。
そんな重要な位置付けの夢なので、丸っと転記する。
この恐ろしげな、“人喰い“はファルロスという地下の神と説明されている。「ユングの生涯」の後に読むつもりの「ユング自伝」に詳述されているらしいのでここでは割愛するが、悪神である。
ユングとしては、ことさら神は至高善としてだけ捉えることに疑義があったということ。よくドラマなどで「なぜ神は私だけに不幸をお与えに。不公平ではないですか。」に類似したセリフをよく耳にする。それは、ネガティヴなこともありうることに触れないできていることが誤解を多くの人に与えていると思う。
ユングとしての結論は、誰の心の中にも、世の中にも悪もいるということでしょう。
私も小学生の頃、同じ怖い夢に起こされる経験があった。相手は背後から追ってきて姿が見えない。気配だけ感じる。最後は壁が現れてそこに何か満月のような顔が現れて目が覚める。何を意味しているのかは、わからない。10歳ごろまでの夢で今はもう見ない。
代わりに40歳ごろまで見たのは、卒業した大学の教務課から電話がかかってきて、卒業単位が足らないので、ドイツ語だったかの授業を再受講して試験をパスしてくれないと、卒業を取り消すというもの。これも意味がわからない夢。
どうでもいいことを書いてしまった。話を戻す。
あと後の章でも触れるが、ユングの世界観、意識の構造に対して、ゲーテの戯曲「ファウスト」の影響は大きいと「ユングの生涯」にかかれている。で、私もゲーテのファウストを読んだ。
確かにゲーテは、この戯曲の中で、神に「人間も悪魔も神の子だ。悪魔が憎いと思ったことはない。」と言わせている。
この考え方は、キリスト教のすべての宗派も認めることなのか、ゲーテとユングだけの考えなのかは、私にはわからない。多分、後者であろう。
東洋思想の陰陽論とか太極論的な考えを持ってすれば、私には容易に受け入れられる。
6.ユングの子供時代の秘密
8〜9歳ごろ、ユングは心を傷つけられたり、父親のイライラに悩まされたりすると、定規から作った6センチメートルほどの”人形”と、ライン川から拾ってきて絵の具で上半身と下半身を塗り分けた”石”を屋根裏部屋で見ることで、癒していたという「秘密」を持っていた。
なんでも秘密を共有したり暴いたりは決して、アイデンティティを保つにはよろしくないようだ。
今回はここまで。私のバイアスのかかった気づきなので、わかりにくかったり、初歩的すぎるところはご容赦願いたい。ご興味を持たれたら、河合隼雄先生の「ユングの生涯」を手にされたい。
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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
E-mail: info@teal-coach.com
URL: https://teal-coach.com/
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