見出し画像

039『内向的直観型IN;タイプ論』-ユングを詠む

1.   イントロ

 ユング『タイプ論』の紹介に一区切りをつける。優越機能又は主機能と呼ばれる下記の8種類からなるユングオリジナルの心理学的タイプがどのようなものか、これまで読んできた文献からまとめておくシリーズをやっている。

今回が最終回!

⭕️ユングの心理学的タイプ8つの優越機能(又は主要機能とか主機能とも呼ばれる)とは、これらのこと。

1.外向的思考型[ET]→032『外向的思考型ET;タイプ論』
2.外向的感情型[EF]→035『外向的感情型EF;タイプ論』
3.外向的感覚型[ES]→036『外向的感覚型ES;タイプ論』
4.外向的直観型[EN]→038『外向的直観型EN;タイプ論』
5.内向的思考型[IT]→034『内向的思考型IT;タイプ論』
6.内向的感情型[IF]→033『内向的感情型IF;タイプ論』
7.内向的感覚型[IS]→037『内向的感覚型IS;タイプ論』
8.内向的直観型[IN]→039『内向的直観型IN;タイプ論』

 外向的、内向的という2つの一般的態度と、思考型、感情型、感覚型、直観型という4つの心的機能の説明を、あらためて説明し直しながらまとめていく。

注意;下記2〜5項の詳細説明は033『内向的感情型IF;タイプ論』を参照方。

2.外向(E; Extraversion)の定義

「リビドーが外へ向かうことを意味する。主体が公然と客体に関係していること、すなわち主体の関心が積極的に客体に向けられていることを表す。(中略)したがって外向とはいわば関心が主体から客体に移ることである」

[3]p461

3.内向(I; Introversion)の定義

 「リビドーが内に向かうことである。これは主体が客体に対して消極的ない関係を持っていることを表している。関心が客体に向かわずに、客体から主体へ引き戻されるのである」

内向的な構えをとる人は誰でも考え・感じ・行動する・さいに、はっきりと見分けがつくほどに、何よりもしぃたいが動機づける側ではあり客体はせいぜい副次的な価値しか持たないという態度をとる。

内向はより知的な性格をも、より感情的な性格をも持ちうる。同様にそれは直観や感覚によっても特徴付けられることができる。

内向が能動的であるのは主体が客体を何らかの形で排除しようと意図するときであり、受動的であるのは客体から逆流してくるリビドーを再びか客体に戻せない時である。

内向が習慣的になっているときに内向的タイプと呼ぶ。

[3]p475

 リビドーとは心的エネルギーのこと。神経細胞などの活動に必要なエネルギーと還元的に解釈を私はしている。

4.心的機能

感覚型、直観型、思考型、感情型、という4つの心的機能の説明。

4.1心的機能;「感覚(S; Sensation)」

「五感による感覚、すなわち感覚器官や身体感覚(運動感覚や脈拍感覚など)による知覚」

[3]p458

4.2心的機能;「直観(N; iNtution)」

「知覚を無意識的な方法によって伝える心的機能 」[3]p475

「その内容がどのようにして生じたのか示すことも発見することもできない。直観はその内容がなんであれ、一種の本能的把握である」[3]p476

[3]

4.3心的機能;「思考(T; Thinking)」

「それ固有の法則に即して、与えられた表象内容を(概念的に)関連付ける心的機能」

[3]p452

4.4心的機能;「感情(F; Feeling)」

「自我と与えられた内容との間に生じる活動であり、しかもその内容に対して受け容れるか拒むか(「快」か「不快」か)という意味で、一定の価値を付与する活動」

[3]p462

ユングは、感情も一種の判断と見做している。

5. 優越機能と補助機能

5.1優越機能

 まず、優越機能とはこのようなものだ。先に説明した一般的態度と心的機能のコンビネーションで形成される。単に足し算しただけではない特徴を示す。この効果はタイプダイナミクスと呼ばれる。

ちなみに第1補助機能、第2補助機能、劣後機能も一般的態度と心的機能の単なる足し算にはならない。

イントロで8つの一般的態度と心的機能のコンビネーションからなる優越機能を列記した。最も習慣的に使っている、あるいはもっぱら意識されている状態にあるコンビネーションが優越機能と呼ばれる。内向的な優越機能は他人からは観察されにくい。

優越機能はそのほかの機能のコンビネーション(一般的態度と心的機能のコンビネーション)に対して優位にある、つまりよく使われる。よく使われるから分化して発達している。

起きて活動しているときに時間的に最もよく使っている心的機能ということになる。この後説明する第1補助機能、第2補助機能もその順番で顕在意識の下に出てくる。劣後機能はほとんど出てくることはない。

第1補助機能、第2補助機能、劣後機能ともに無意識下で機能している。ただ顕在意識として自我がその活動を認識できないことが多い。

優越機能に話を戻して、『タイプ論』からその説明文を拾ってみよう。

5.2 補助機能

 補助機能の前に、不合理的機能と合理的機能について説明が必要であった。

非合理的機能とは、感覚(S; Sensation)直観(N; iNtution)の2つ。知覚機能とも呼ばれる。

合理的機能とは、思考(T; Thinking)感情(F; Feeling)の2つである。判断機能とも呼ばれる。

 優越機能が、非合理的機能ならば補助機能は合理的機能が担う。また逆も然り。文末に掲載した“こころの羅針盤”のイメージのように非合理的機能と合理的機能の軸が直交する。

6.内向的直観型[IN]

特徴:内的なビジョンが確立されるまでは行動に移さない。「あっそうか!」という体験が得られるまで、本を読んだり内省したり内面にある知識やイメージを探求する。一旦そうなるとためらわず自信を持って行動するが、すでに本人の中では複雑かつ完全なものとなっているので、この時点からの変更は困難を極める。 [2]p15
動機づけ:世界を理解するために、本質を見抜いていくようなもののパターンを確立していく。 [2]p15

優越機能として内向[I]と直観[N]のコンビネーションが現れるものだ。

第1補助機能に思考[T]がくるものと感情[F]が来るものの2種類がある。MBTI®︎では優越機能が内向[I]の場合であるので、この第1補助機能が、必ず外向[E]となる。しかし、ユングのオリジナルのタイプやマイヤー親子以外の研究では外向[E]になることもあるとされている。MBTI®︎との差別化の意味でも第1補助機能を外向[E]に限定しない立場とする。

◎内向的直観型[IN]の特徴[2]p15

・今までにない新しいものの見方や解釈の方法を確立するために、無意識に湧いてくるイメージやものごとの関連性を見出すことにエネルギーを注ぐ
・内なるビジョンや洞察したことが察知されやすいように、環境を変えたり、調整する
・ものごとを理解したり、決断のための指針を得るために、独自の複雑な体系を創る
・ものごとの本質を捉え、長期的な見通しを描く役割を果たす
・ものごとを深く理解するという印象を与える
・熟考し自分の洞察の自信を持つ
・あらゆることの背景にあるパターンや意味を見出そうとする
・自分の観点を合わない細部の情報を、受け付けなかったり、歪めたり、単にも落とすことがある
・独自の複雑な体系によって得られた洞察を、周囲に伝えることが難しいと感じることがある
・真剣さや一途さを持って取り組む姿勢を基本に持ち、ものごとを理解したり、意味を持たせたりしながら、自分が個人的に描いたビジョンを照合させようとする
 
内向的直観型(思考優位)[IN:T]と内向的直観型(感情優位)[IN:F]の“こころの羅針盤“イメージを7項に載せておく。

6.1内向的直観型(思考優位)[IN:T]の特徴[2]p12

・外界を体系立てて、論理的な秩序を築く
・思考機能(外向の場合)で自分の考えを論理的に、明確に人に伝える
・論理を通すことが最終目的としてはいない
・人の分析やアイデアが、自身の直観機能で得られたパターンや洞察と合わないと、人のものがどんなに明確で論理的でも受け入れない
・頑固に自分が正しいことにこだわることがある

6.2内向的直観型(感情優位)[IN:F]の特徴[2]p12

・価値観に関心を向け、他者に誠意を尽くそうとする
・他者の求めを考慮したり、人々の目標を実現していくために環境を整理する
・優越機能である内向的直観で得た内面にあるビジョンに合わないことが提案されると、大事な人の提案であっても、周囲からは彼の内面の価値観にあっているように見えても頑なに拒否することがある。
・内的ビジョンと外界とを適合させようと懸命になることがある

7.こころの羅針盤
7.1内向的直観型(思考優位)[IN:T]

優越機能が内向直観型、第一補助機能が思考型、第2補助機能が感情型、劣等機能が感覚型。

優越機能(主機能)が内向直観型、第一補助機能が思考型、第2補助機能が感情型、劣等機能が感覚型。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。
MBTI®︎ではこのパターンはありません。

赤い大文字アルファベットが外向的、
青い大文字アルファベットが内向的を表す。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。

図の上にいくほど意識されやすい機能、すなわち優越した機能。下にいくほど意識される時間が少なくなり、劣等機能はほとんど意識されないばかりか無意識下でも活動していないことも考えられる。

7.2内向的直観型(感情優位)[IN:F]

優越機能が内向直観型、第一補助機能が感情型、第2補助機能が思考型、劣等機能が感覚型

優越機能(主機能)が内向直観型、第一補助機能が感情型、第2補助機能が思考型、劣等機能が感覚型。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。
MBTI®︎ではこのパターンはありません。

赤い大文字アルファベットが外向的、
青い大文字アルファベットが内向的を表す。
緑の文字の機能は片方が外向ならもう一方は内向になる関係。

図の上にいくほど意識されやすい機能、すなわち優越した機能。下にいくほど意識される時間が少なくなり、劣等機能はほとんど意識されないばかりか無意識下でも活動していないことも考えられる。

8.あとがき

 ユングの心理学的タイプ8つの優越機能の説明はこれでおしまい。

 書いていて、気がついたのは、劣後機能について『タイプ論』の中では誌面をさいて説明している。
 劣後機能は、優越機能を発達させる過程で後回しにされたり、不得手な機能なので放置されたりしていく。
  人生の後半においてそれまで使ってきた優越機能に乗って生きていくことに対して疑問をユングはじめユング学派の一部は唱えている。人生が50年ぐらいと短い時代では、優越機能を磨くだけで一生が終わっていたろう。しかし、人生100年時代においては劣後機能に目を向けたらどうだろうか?
 劣後機能を開拓することで人生後半を豊かにするヒントがあるという情報は続けて共有してみたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?