ロケット&サブマリン〜僕の双極性障害デイズ〜アキラくん編
今回は少し就労移行支援事業所卒業後の話も混ざるのですが残しておきたいことなので綴っておきます。
前回、僕が就労移行支援事業所で恩師としているホシノさんのことを綴った。
そのホシノさんによくどやされていたのがアキラくんだった。
まぁまぁなかなかにどやされていたのでちょっとやり過ぎじゃないかなと思うこともあったのだけど、
嫌なら嫌と伝えることもここで学ぶことの一つだと思っていたので僕はとやかく言わなかった。
何よりもアキラくんはめげることなく熱心に訓練を受けていたのでその姿に色々と感じていたというのもある。
ある日のこと。
僕は思い切ってアキラくんに話しかけてみた。
単純に「アキラくんはすごいね」ということを伝えておきたいと思っていたんだけれど、
アキラくんから返ってきた言葉はなんだか照れくさかった。
「野間さんはいつもおしゃれでカッコいいなと思っていたので話ができて嬉しいです」と。
屈折のない言葉は簡単に言えるもんじゃない。
だからアキラくんの真っ直ぐな言葉は贈り物のような感じだった。
その日から僕らは休憩時間に色んなことを話すようになった。
お互いベイスターズファンで音楽が好きという共通点が見つかったり少しおちゃめなことを言ったりするところもあって弟のような感じだった。
確か6つくらい年下だったと思う。
正直、アキラくんが精神障害者だとは全く思えなかった。
確かに少し疲れやすいような感じはしていたし一つ一つの作業は丁寧なぶんかなりゆっくりだったけど
精神科薬でぼーっとしている感じとは違った。
なので僕は思い切ってアキラくんに疾患の話を振ってみることにした。
これ、簡単なようでけっこうナイーブというか聞きづらいことの一つでもあって本人の口から出てくるまで聞かないのが暗黙の了解というところもある。
ぶっちゃけて言うと双極性障害でも統合失調症でも大うつ病でも僕が態度を変えることはないけどアキラくんだけは周りと違うから知っておきたいと思っていた。
そこで教えてくれた疾患が「高次脳機能障害」
当時の僕はなんとなーく、うっすら名前は聞いたことがあるくらいだったから頭にハテナが浮かんだ。
さらっと説明すると一般的に交通事故などの外傷や脳梗塞などの後遺症で起こることが多い疾患で
記憶力が低下したり感情のコントロールが難しくなったりと様々な症状が起きてしまう。
ディジリドゥ奏者で有名なGOMAさんが交通事故で高次脳機能障害になってしまったことで認知度が上がっているような気もする。
高次脳機能障害は制度上、身体のどこに障害があるかで障害分類が変わるのだけど、
アキラくんは手足の麻痺など身体的な障害がなかったので器質性精神障害となりここに通っていた。
アキラくんは脳腫瘍サバイバーだったことをそのときに教えてくれた。
中学生のときに発症して高次脳機能障害となりリハビリを重ねてここまでたどり着いていたことを聞いたらホシノさんにどやされるくらいは気にしていないというか、
僕と同じで心配しているが故の厳しさということをきちんと感じ取っていた。
本当に立派というかしっかりしているアキラくんとは一気に仲良くなって直行直帰だった僕だったけどアキラくんとは帰りにカフェに寄ってみたり本屋に寄ってみたりと
まるで放課後の学生みたいなこともしていた。
アキラくんは結婚している僕のことを若旦那と呼んでくれるようになってお互い卒業したらハマスタに行こう、カラオケも行こう、カミさんにも会わせたいなんて話ばかりしていた。
ただ、この約束は叶わなくなってしまった。
僕が卒業して1年後。
アキラくんは脳腫瘍が再発してしまった。
かなり大変な手術だったみたいだけど見事に耐え抜いたようでメールをくれた。
その数カ月後。
再々発。
アキラくんはこの世を去った。
神様なんてものはいない。
いるとしたらかなり歪んだ性格だと思う。
そんな神様ならぜひ消えていただきたい。
数日間はずっとそんなことばかり考えていた。
悲しいのだけど世の理不尽に憤るような複雑な感情で過ごしていた。
なぜアキラくんなのか。
考えたところで答えは出ないけれど考えずにはいられなかった。
自死したAくんのことは頭ひっぱたいてやりたいけどアキラくんは戦い続けた人生を褒めてあげたい。
就労移行支援事業所には必ずしも就職したい人だけがいるわけじゃない。
主治医や家族、行政のワーカーによる本人不在の支援計画で仕方なく通っている人もいた。
狡猾なパフォーマンスとして通っている人もいた。
だから余計にアキラくんの清廉な笑顔は今も僕の中で生き続けている。
辛いときは空を見上げて心の中でつぶやく。
「生きるってしんどいねぇ。けど俺、負けねーよ。絶対に覆すから見てなよ!」と。
そして楽しいときも空を見上げて心の中でつぶやく。
「やっぱり生きるって楽しいねー!どうだい?見えてるかい?」と。
Aくんにも同じことをつぶやく。
僕は…
二人のために生きていることの楽しさと喜びを感じていたいとずっと思っている。
若くしてこの世を去った二人のためにできることは無信心な僕からすれば墓石の前で祈りを捧げることよりもワクワクするようなことをたくさん企んで実行することだと思っている。
さて…今の僕を見たら二人はどう思うだろう。
何となくこんなことを言ってくれる気がする。
「堂々と胸を張ってください」
完全に願望じゃねーか…
いや、でもこの下りでアキラくんは笑ってる気がする。
明日は月食だから一緒に見るか!
僕は下から。アキラくんは上から。
カミさんと見上げるから刮目せよ!
ってなところで今日はこの辺で。
いつにも増して私的な内容でしたが最後まで目を通してくださりありがとうございました。
次回は再び就労移行支援事業所での日々を綴りますね。
またお暇でしたら付き合っていただけたら嬉しいです。
それではまた!アディオース!!
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