忍者、事務職はじめました Vol.3
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忍者、事務職はじめました Vol.3

インザスカイ・ワカサ@独暇流忍者

次の日、私は朝早く目覚めました。

スーツに着替え、さっそく昨日出会った社長さんの会社、正確には社長さんへ教えてもらった住所へ向かいました。

教えられた住所には、会社らしき建物がありました。

しかし、どうやら開いていないようなのです。

入口のドアは自動ドアではないため、私の中の忍者が出ているわけではありません。

考えてみたら、何時に行ったらいいのか聞き忘れていました。

今は早朝の5時。

会社の入り口で、なぜか新聞配達員から渡された新聞を持ったまま、3時間ほど経過しました。

ようやく従業員の方が出勤されたようでした。

「あの、昨日、社長さんと面接をしまして、電話を持っていないので直接会社の方へ来てほしいと言われて来た者なのですが」

「え?電話を持っていないですって?」

次々と出勤してくる従業員の方々。

「ちょ!この人、電話を持っていないんだってさ」

「え?マジで?それって本当なんですか?」

「あ、はい、電話は持っていません。今まで困ることがなかったもので」

独暇の里では、連絡を取り合う際には狼煙を上げていました。

電話が必要なかったのです。

「社長は、たぶんあと30分後には来ると思いますので、中でお待ちください」

そう促された私は、会社の中へ案内されました。

入り口には社名が記されていました。

【フリータイムアローン株式会社】

「暇な時間に独りで・・・、え!?それって、独暇流ってこと!?」

あまりにも大きな声だったようで、職員の方を驚かせてしまったようです。

それにしても、本当に運命を感じました。

独暇流忍者が、フリータイムアローンという会社に就職するかもしれない!?

いや、これはもう、就職できたも同然だと、この時は直感でそう思いました。

10分後、社長さんが出勤してきました。

「あ、社長、今日は早いですね。何か、昨日社長と面接をしたとかいう人が来てますけど」

「あ、ありがとう。そう思って、今日はいつもより早く出社したんですが、もう来てたんですね。実は、時間を伝え忘れていたので、営業開始時間に来るかもしれないと思ってたんですが」

「もう、社長、しっかりしてくださいよ!」

社長さんが昨日言っていたことは、本当だった。

普通に、部下に注意されている。

大丈夫かな、この社長さん。

などと思いながら、そのやり取りを見ていました。

「あ、おはようございます。すみません、時間を伝え忘れてましたね」

「あ、いいえ、こちらこそ、時間を聞かなかったのが悪いので。朝5時から待ってました」

「え?朝5時から待ってたんですか!?」

「電話も持ってないし、朝5時から待ってるなんて、何かもう、ちょっとオレ、SNSに書込むわ」

社内のザワツキがいっそう激しくなりました。

どうやら、朝5時というのは、忍者の世界では何の意味もない時間であっても、一般社会では少し特別な時間のようでした。

後から知ったことですが、朝5時というのは、高齢者が起きる時間として一般的に認知されているとのことです。

入社もしていないのに、圧倒的なインパクトを残した私は、忍者としては失格なのかもしれません。

ここまで目立ってしまっては、ミッションを達成するのは並大抵のことではありません。

しかし、今は会社に採用されるかどうか。

そういう意味では、ここまでインパクトを与えられたのは、成功だったのかもしれません。

「ちょっとオレ、あの人と一緒に働きたいかも」

「だよね!毎日、めっちゃ面白そうだもんね」

「アメージングな仕事をしそうだね」

すでに社内では歓迎ムードです。

さぁ、社長さん、この社員の皆さんの声を是非取り入れてください!

と思って社長さんの方を見たら、電話中でした。

残念ながら、社長さんに対しては、何のインパクトも与えられなかったようです。

「すみません、急ぎの電話が入ったもので」

「あ、いえ、全然大丈夫です」

「では、こちらへどうぞ」

「はい、よろしくお願いします」

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インザスカイ・ワカサ@独暇流忍者
独暇流(どっかりゅう)忍術の創始者。忍びの者とは、刃の下においてでも揺るがぬ心を持ち、覚悟を持って耐え忍ぶ者のこと。仕事に活かせる忍術、馬券回収率を向上させる忍術、タロット占いや手相鑑定と融合させた忍術を発信しています。知ってるでしょう?(・∀・)ノシ--==(((卍