見出し画像

『ぷくぷく』

「なぁ、あいつの指、ぷくぷくしてて
まるで子持ちしししゃもみたいじゃね?」
「どれ?どいつ?」
「ほら、あそこに座ってるやつ、あのメガネの隣」
「あぁ、あのサンドイッチ食ってる娘ね、
たしかに子持ちししゃもみたいな指してんな」
「あの指、切ってみたらホントに卵が
ぱんぱんに入ってたりしてな」
「ははっ、案外そうかもな」
「なぁ、切ってみようか?」
「え?」
「俺ンち、医者じゃん。
メスとかそろってるし、麻酔もあるしさ、
親ふたり共、昨日からしばらくいないんだよ」
「でも、どうやって」
「クロロホルム嗅がせればいいんじゃねぇの?
ほら、ドラマみたいにハンカチに染み込ませてさ」
「じゃ、なに?あの娘、拉致っちゃうの?」
「うち、町医者だから入院患者いないし、
うまく連れ込めれば、あとは大丈夫なんじゃね?」
「そっかぁ」
「指の付け根、ぎゅっとしばっときゃ、
血もそんなに出ないだろ、
あとはメスで、こう縦にすっと切れ目入れて
ぱかっと開いてさ。
ホントに卵入ってたらどうする?
あの指のぷくぷくんとこにぎっしり」
「うわぁ、そりゃキモいな」
「はははっ、じゃぁ、今夜やるってことで決定な。
俺、うち帰ってクロロホルム用意してくっから、
お前、あの娘見張ってろよ」
「おし、わかった」
「移動したら携帯に電話してくれ。じゃ、またあとで」
「おぅ、じゃな」

*** 次の日 ***

「おつかれ~」
「おつかれ~。やっぱ卵、なかったな」
「当たり前だろ、お前、ホントは半分
信じてたんじゃねぇの?」
「おぃおぃ、そんなわきゃないだろ」
「ははは、しかし、昨日は大変だったな
まさか目ぇ覚ますとは思わなかったよ」
「そうだな、一応縫ったあとでよかったよな
指、開いたままであんなに暴れられたら
お前んち、血まみれになってたもんな」
「あぁ、ちょっと指開いたくらいで、大騒ぎしてな
ぎゃぁぎゃぁ泣きわめいて最後には「訴えるぅ」って」
「大人しくしてりゃ、普通に帰れたものをな、
指一本くらいで、命まで落とすことはないのにな」
「ま、あれはしょうがねぇわな」
「うん、しょうがね、しょうがね。
で、あの後どうした?俺帰っちゃった後」
「あぁ、あぁいうのは、なんとでもなるのよ、
いろんなルートがあってさ、問題ナッシング」
「そっかそっか」
「それよりさ、あそこにいるショートカットの娘、見てみ」
「ん?どれどれ?、あぁ、あの娘がどうした?」
「あの娘の耳さ、、、餃子に似てね?」

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?