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『告白雨雲』(毎週ショートショートnote)

私が彼への気持ちに気づいたのは
彼に彼女が出来たときだった。
その彼女と別れたと聞いた時には、私に彼氏がいた。
先日、私は彼氏に別れ話を切り出した。
「旅行にでも行こっかな」
そして私は今、ひとり日本とは違う景色の中にいる。

「やあ、これは珍しいな」
1日貸し切りのタクシーに乗りさっきからずっと
窓からの景色をぼんやりと眺めている私に
ドライバーがきれいな日本語で
独り言のように話しかけてきた。
「え?」
「あれは告白雨雲だよ」
「告白雨雲?」
彼がフロントガラス越しに指差す空には
小さな雲が浮かんでいる。
ドライバーがバックミラー越しに
「降りてみる?」と言った。

「あの雲に念じると相手のところまで行って雨を降らす。
雨は相手の心に君の伝えたいことを届けてくれるよ」
私はドライバーに促されて彼への想いを念じてみた。
すると告白雨雲は、わかったとでもいうように
すっと離れていった。
「日本まで届きますか?」と聞いた私に
ドライバーは「さぁてね」と微笑んだ。

(410文字)

<あとがき>
最初に浮かんだのは、失恋した女性とその友達による
女性だけの海外旅行。
失恋した女性が友達に、実はなんでもない雨雲を指さして
あれが告白すると嫌なことを忘れられる雨雲だと教えられ
思いの丈を告白すると突然のスコール。
ズブ濡れになって2人で笑うってストーリーでした。

『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』

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