『穴の中の君に贈る②』(毎週ショートショートnote)
いつの頃からか僕の胸にぽっかりと空いた穴の中に
いつの頃からか君は住んでいる。
いつの間にか大きくなってしまった穴の中で
いつの間にか君はすっかり大人びて。
それでも君は澄んだ目をして
いつまでも空を見上げている。
空にぽっかりと空いた僕の穴からは
いつも静かに雨が降り続き
傘を持たない君は端っこのさらに隅っこで
少し濡れてしまった服の裾を弄ぶ。
傘を贈りたいな。
小さな水玉模様のさ。
僕は水玉模様の傘を想像して
僕の胸に空いた穴にそっと差し入れる。
君は雨に濡れるのもかまわずに
僕が差し出す傘に向かって手を伸ばすけれど
傘はその手に触れるか触れないかのところで
いつものようにふっと消えてしまう。
そんなときでも君は僕に
やさしく微笑むんだ。
もっと僕みたいに泣いていいのに。
僕みたいに泣いてくれたらいいのに。
いつの頃からか僕の胸に空いた穴の中に
住み着いた君は僕のことを知らない。
空に手を伸ばして指で輪っかを作れば
満月のようにぽっかりと空いた誰かの穴。
(410文字)
<あとがき>
ショートショートなのか何なのか
よく分からないものが出来ました。
詩?ともちょっと違うような。
そんな感じです。
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