見出し画像

『ロッキングチェアーに揺られて』

真っ白な壁が朝日を受け、光り輝く。
遠くに見える山の緑が、段々と深みを増してゆく。
海からの風はやさしく草花を揺らし、
テラスにいる私の頬をそっと撫でてゆく。
少しウェーブのかかった私の髪は、
幾分、張りを失ったけれど、
それでも、風を含んで時折ふわりとなびいて
私は、風のしたいままにさせている。

この丘から見える風景は、
どこか遠く行ったこともない外国の記憶を
呼び覚ませてくれるようだ。
そこが気に入っている。
眼下に広がる海は、青く澄み、凪いでいる。
少し先の崖から、勇気を出して覗きこめば、
白い砂浜が見えることだろう。
私の秘密の白い小さな砂浜が。

また、後ろを振り向けばそこに深い森が
私のこの小さな家に覆いかぶさるように
広がっているのが見えることだろう。
森には木々の隙間を縫って陽の光が差し込み、
恐ろしい動物が姿を見せることはないが、
森そのものの生命力を強く感じる。

私はこのテラスで、古びたロッキングチェアーに腰掛け、
風が、ゆりかごのように揺らすままに
暖かな日差しを浴びながら揺られている。
来る日も来る日も、、、。
それは、雨が降ろうとも、
冬になって雪になろうとも変わらない。

誰かが偶然、見つけてくれるその時まで、
この気持ちのいい風が通るテラスに置かれた
古びたロッキングチェアーに腰掛けながら
いつまでもいつまでも、風に揺られている。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?