![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82654753/rectangle_large_type_2_bb79c3533dcbcae3e97bc0167765ad8a.jpeg?width=1200)
『ロッキングチェアーに揺られて』
真っ白な壁が朝日を受け、光り輝く。
遠くに見える山の緑が、段々と深みを増してゆく。
海からの風はやさしく草花を揺らし、
テラスにいる私の頬をそっと撫でてゆく。
少しウェーブのかかった私の髪は、
幾分、張りを失ったけれど、
それでも、風を含んで時折ふわりとなびいて
私は、風のしたいままにさせている。
この丘から見える風景は、
どこか遠く行ったこともない外国の記憶を
呼び覚ませてくれるようだ。
そこが気に入っている。
眼下に広がる海は、青く澄み、凪いでいる。
少し先の崖から、勇気を出して覗きこめば、
白い砂浜が見えることだろう。
私の秘密の白い小さな砂浜が。
また、後ろを振り向けばそこに深い森が
私のこの小さな家に覆いかぶさるように
広がっているのが見えることだろう。
森には木々の隙間を縫って陽の光が差し込み、
恐ろしい動物が姿を見せることはないが、
森そのものの生命力を強く感じる。
私はこのテラスで、古びたロッキングチェアーに腰掛け、
風が、ゆりかごのように揺らすままに
暖かな日差しを浴びながら揺られている。
来る日も来る日も、、、。
それは、雨が降ろうとも、
冬になって雪になろうとも変わらない。
誰かが偶然、見つけてくれるその時まで、
この気持ちのいい風が通るテラスに置かれた
古びたロッキングチェアーに腰掛けながら
いつまでもいつまでも、風に揺られている。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?