『男子宝石②』(毎週ショートショートnote)
「駅前にある廃ビルあるだろ?」
唐突に友人が話しかけてきた。
「廃ビル?」
俺は頭の中に駅前の風景を思い浮かべた。
4階建てのそのビルは
ところどころコンクリートが剥がれ
鉄骨がむき出しになっていて
学校や親からは危険だから近づくなと言われているが
そんなことを言ったら逆効果。
俺たちは肝試しと称して何度も忍び込んでいた。
「とうとう取り壊されるのか?」
「違う違う、そうじゃなくてさ。
あそこ、出るらしいよ」
「出るって?」
「お化け」
俺は思わず吹き出してしまった。
もうじき高校受験も始まるってのにコイツだけずっと
小学生のまま止まってんじゃないか?
「おいおい、今まで何回忍び込んだ?
そんな気配、これっぽっちもなかったろ」
「中学生くらいの男子でさ、体はエメラルドのような緑で
目はルビーみたいに真っ赤に光ってたらしいよ」
「それってこういうことか?」
そういうと俺は自分の目をくりぬいて
友人に放り投げてやった。
受け損ねた友人の足元で跳ねる深紅の石2つ。
(410文字)
<あとがき>
書いてて、のっぺらぼうの話みたいだな
と思いました。
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