『嘘の色』
晴れた朝は金属の味がする
澄み切ったとはお世辞にも言えない空は
まるでカッターナイフで切ったかのように
細い筋がいくつも並んでいる
あそこに赤と黒を置いてみたいね
そういって空を指差した老人の手には
何も色のついていない絵筆が握られている
僕はその絵筆を取り上げてこの世界に嘘を塗りたくる
辺り一面に立ちこめる僕の匂いは
この街に溶け込んで今は嗅ぎ分けることすら出来ない
老人の絵筆に残る僕の嘘
その色は街を流れる河の色に似て
何色とも答えようがない
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