『ドローンの課長』(毎週ショートショートnote)
テレビで見たドローンに目を奪われた私は
貯めた小遣いをつぎ込んでドローンを購入した。
小学校の校庭で飛ばすと
子供たちの目がキラキラと輝いた。
しかし大人たちは役場の福祉課長の私を蔑んだ目で
『ドローンの課長』と呼んだ。
そんなある日、山間の老人宅まで物資を届けるのに
ドローンが導入されることとなり
私がオペレーターに選ばれた。
私が慣れた手つきでドローンを操作すると
周りの人達は手のひらを反すように
『ドローンの課長』と尊敬のまなざしを向け、
生活物資を運んだ老人たちからは親しみを込めて
『ドローンの課長』と呼ばれた。
しかしある時、飛んできたドローンに驚いた老人が
転んでケガをするという事故が発生した。
ドローンの使用は中止され、私は
『ドローンの課長』と後ろ指をさされるようになった。
しばらくしたある日、山で土砂崩れが発生した。
私はドローンを飛ばして救援物資を運び
何人もの命が救われた。
『ドローンの課長』は今日もまた多くの物資を運んでいる。
(410文字)
<あとがき>
同じ言葉でもシチュエーションによって
いろいろなニュアンスがあって
面白いな、という思いで書きました。
最初は600文字くらいになってしまったのを
410文字に落とす作業が大変でした。
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