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エラリー・クイーン『エジプト十字架事件』

創作大賞2023のミステリー小説部門に一作エントリーしたものの、ここんとこそういうのすっかりご無沙汰だったんで、締切も近いし一冊くらい読んどくかなーと積読本からチョイスしたのがこちら。

エラリー・クイーンの国名シリーズ、なんとこれが初読みである。

最高傑作の誉れも高いギリシャ棺すら未読なのに、なんで次作からっていうね。

でも他のは手許にないし。

これも傑作らしいし。

ちなみに読んだことがあるのは『中途の家』『災厄の町』『十日間の不思議』『九尾の猫』『ダブル・ダブル』『最後の一撃』。

ライツヴィル多し。

あっ『Xの悲劇』も入れとかないと。


一般に『エジプト十字架の謎』の邦題で知られる本作、このデジタル版は1964年出版の石川年訳・角川文庫版が底本なのでタイトルも異なり訳文も古めかしい。

だけどこの古さがいいのよ。

探偵小説でいえば古典だしね。

「読者への挑戦」とか久方ぶりに見たわ。

現代の目の肥えた読者ならあっさり見破りそうな大時代的なトリックだし、実際自分程度のライトな読者でも真犯人の指摘だけなら難しくなかったが、それを可能とする記述の整合性、誠実さには舌を巻く思いがした。

随所で見せるエラリーの推理はそれはもう名推理だらけ。

犯人は誰か? と何故死体の首が切断されたのか? が密接不可分にリンクする、フーダニット&ホワイダニットの偉大なる先達にして名作たる所以。


終盤の延々と続く追いかけっこには少々辟易するが、もしエラリーが先導する展開だったら更にダレていただろう。

これは著者なりのショートカット案よね。

しかもエラリーの一番最後の味わい深い発言を加味すると、この追跡劇も悪くないと思えてくるから不思議。

中盤以降すっかり鳴りを潜めちゃう太陽教にもちゃんとフォロー入れてるし。

いや、ホントよくできてる。

傑作です。

ここまでご覧いただき、まことにありがとうございます! サポートいただいたお礼に、えーと、何かします!!